「クライムミステリーとしては難しい部分はあるが、一気に駆け抜けるパルクールっぽさがあった」シャドウズ・エッジ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
クライムミステリーとしては難しい部分はあるが、一気に駆け抜けるパルクールっぽさがあった
2025年の中国&香港合作の映画(141分、G)
リメイク元は2007年の映画『Eye in the Sky(監督:ヤン・ナイホイ)』
サイバー犯罪に関わることになった「追跡のプロ」を描いたクライムアクション
監督&脚本はラリー・ヤン
原題は『捕風追影』で「風を捉えて影を追え」、英題は『Shadow’s Edge』で「影の刃」と言う意味
物語の舞台は、中国・マカオ特別区
サイバー犯罪の捜査にあたっているマカオ司法警察は、ある犯罪グループを追って、捕獲作戦を実行していた
相手は複数人の男たちのようで、ある金庫から何かを盗む目的でホテルへと潜入を開始していた
司法警察のサイバー班の責任者・ワン部長(ラン・ユエティン)の指揮の元、サイバー班と実行部隊が連携を取っていたが、敵の陽動作戦にハマり、さらに防犯カメラのシステムをハッキングされてしまい、相手を取り逃してしまった
局長のカル(メルヴィン・ウェン)は、かつて「追跡のプロ」と呼ばれていたホワン(ジャッキー・チェン、若年期:グ・ソドン)を呼び戻すことを決め、彼の行方を追って、テオグオ(チャン・ツイフォン)と同僚のジンシャオ(ジョウ・ジェンジェ)が追跡を開始していた
だが、あっさりと尾行はバレてしまい、ホワンは思惑通りにマカオ司法警察に力を貸すことになった
彼は「追跡班」の再結成を必要とし、テオグオ、ジンシャオを筆頭に9名で構成されるチームを作り上げた
彼らの任務は街に溶け込むことであり、「影(のちにフー・ローシャンと判明、演:レオン・カーフェイ、若年期:バル・ジータン)」を特定することだった
追跡が始まって15日が経った頃、ようやく「影」を宝西市場にて見つけることに成功する
追跡班はホワンの指示に従って距離を保ちながら、顔の割れていないテウグオを最前線に送り込む
そして、テウグオは落とし物を探すふりをしながら、水溜まりに映った「影」の顔を捕捉することに成功する
さらに、住人を装って「影」と一緒にエレベーターに乗り込むのだが、その行動を危険だと感じたホワンは、彼女の父親のふりをしながら、「影」と日常会話を交わすことになった
「影」は思うようには動いてくれないものの、ホワンの仕掛けによって部屋番号を特定することができた
そして、チームは「影」の動く方向を見定めることになったのである
物語は、かなり登場人物の多い作品で、冒頭では誰が誰なのかが把握しづらい
それでも、主要メンバーはパンフレットにも載っている15人程度が識別できればOKで、それ以上を調べようとしても、なかなか情報を得ることはできない
マカオ司法警察VS「影とその息子たち」と言う構図になっていて、「影」の養子が6人登場する
その中のシーワンとシーモンが双子(一人二役、演:ツーシャー)なのだが、武闘派&ドライバーが兄のシーワンで、メガネのハッキングが弟であると認識できれば良い
ポストクレジットでは、3人目となるシータイが登場するのだが、この人物が次作以降に登場するキーとなる人物で、おそらくはホワイトハッカーであると考えられる
ホワンはこの男と繋がっていて、最後には「多国間追撃任務」が発令されたことが仄めかされていた
映画は、老人二人のアクションに加えて、「影軍団4人のパルクールっぽいアクション」も見どころとなっている
展開がかなり速く、テウグオと「影」のスマホの遠隔ハッキングが何のために行われて、どうなったのかは把握しづらいように思えた
この一連のシーンは、シーモンがホワンとテウグオを怪しんで仕掛けたトラップで、彼の操作するモニターには、テウグオのスマホの内部が見られるようになっていた
おそらくはそのスマホの情報を本部で抜き取った際にバックドアが仕掛けられる仕様になっていて、それが本部襲撃の足掛かりになっていた
シーモンは「影」に問題ないと嘘をつき、そしてシーワンにチャンスを与えていた
この段階で「影」はシーモンの目論見に気づいていて、そこからは「シーモンの送り込んだ傭兵との対決」が繰り広げられていく
冷遇されていると感じていたテウグオは、まさに「ホワンの切り札」であり、さらに彼女の踏み込み過ぎた一歩と言うものが致命傷にもなったりもする
かなりの知能戦にもなっていて、追撃任務の緊張感というものもうまく表現されていた
勝ち気に迫るテウグオを宥めるための回想シーンは胸熱の展開で、それをスタッフ全員が聞いていて決意を新たにするシーンも良かった
多くの犠牲者を出し、テウグオを想っていたジンシャオの殉職などもあった
ラストの集結にて、テウグオが「アルパカ」を想起するシーンがあるのだが、彼の後ろ姿だけが瞳に映っていると言う演出は涙なしには見られない
いずれにせよ、現代的なサイバー犯罪を取り扱いつつ、ラストが「前時代的な落とし所になっている」と言うのはうまい構成で、犯罪に対するジェネレーションギャップというものもうまく構成されていたと思う
暗号資産で12単語の入力が必要と言うのはMetaMaskなどで暗号資産を管理したことがある人なら知っていると思うので、経験者はニヤリとしてしまうシーンだと思う
最後の単語が「Escape」と思わせておいての「Escalate」と言うのもセンスが良くて、次作以降では「行方不明なのに警察のサーバーに管理されている15億米ドル」を中心に展開していくのだろう
今作ではモブに近かった局長あたりの活躍の場があると思うし、また脱獄すると思うので、さらなる「Escalate」を楽しめるのではないだろうか
そう言った意味において、20年は無理だと思うものの、続いて欲しいシリーズだなあと思った
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。
