「自分主体に答えを出さない拗らせ方が絶妙」星と月は天の穴 TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
自分主体に答えを出さない拗らせ方が絶妙
最近殊に「話題作だから」と言う理由で作品を選択する、或いはそれを強迫観念のように「観なきゃ」とは感じることが“ほぼ”なくなり、今年は劇場鑑賞を見送った“話題作”が沢山ありました。今週もビッグタイトルである『アバターシリーズ』の新作が公開されましたが、私は鑑賞予定なし。と言うことで、“私チョイス”の今週1本目は、荒井晴彦監督(脚本)の新作をTOHOシネマズシャンテで鑑賞です。
時代は1969年、作家を生業とする43歳の矢添克二(綾野剛)は過去に「短い結婚期間、からの離婚歴」があり、またある身体的な事情にコンプレックスもあって、女性との関係の持ち方や距離の取り方に敏感で譲れない一線があります。とは言え、定期的に娼婦を買ったり、何の脈略もなく街中で声を掛けたりと、作家と言う職業柄「なんでも仕事につながる」と言いつつ、“お盛ん”と言っても過言ではないくらいに積極的。勿論、それが成立するくらい女性に対するあしらい方は堂に入っており、だからこそ女性にモテていることが前提にあります。ふらりと入った画廊で出会う大学生・瀬川紀子(咲耶)とは、意気投合とは真反対なのになぜか急接近していく二人の仲はその後…
荒井晴彦氏と言えば“オトナ♡”な作品が多くありますが、特に自身が監督も務められる作品は濡れ場こそが重要な要素でありつつ、やはり映画としての芸術性があり品格を感じるしちゃんとエロい。そして肝心なストーリーですが、殆ど劇的と感じるような展開はなく、むしろ終始が淡々としてアクシデントですら次の展開への“きっかけ”ぐらいにしか扱いません。そのせいか、出てくるキャラクター次第では話に乗れたり、乗れなかったりと、観てみないと判らないという難もあります。その点で、綾野剛さん、柄本佑さんへの信頼の高さも解りますし、お二人も見事に応えていて、本作における綾野さんも女性に対して自分主体に答えを出さない拗らせ方が絶妙です。
そして、1969年と言う時代、私自身が生まれる2年前なのですが、見ていた世界や雰囲気はある程度わかるからこそ、部屋の様子や家具、連れ込み宿の感じなど美術・装飾についても見どころが多い。一部、ポケットのタバコが“赤ラーク”だったり“ハイライト”だったりとやや繋がりに欠けるところもありますが、その程度は些末な問題で見過せるレベル。私としては矢添の愛車“ベンベー”の状態がよくて、観ていて非常にトキメキました。
そして、これは決して演じられた咲耶さんを批判するわけではなく、彼女が「瀬川紀子」と言うキャラクターに対してあまりハマっていないように見え、その紀子が本作における“女性側”のメインキャラクターだけにイマイチ入り込めず、、、田中麗奈さんの「千枝子」は凄く良かったんだけどな。。本作に対して比較的高い評価が多い中、誠に恐縮ですが私はやや点数を下げての評価となりました。相済みません。そして、咲耶さん、益々のご活躍を期待しています。
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