ぼくらの居場所のレビュー・感想・評価
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イタールの失敗した教育実験の取り返しと「モザイク国家」の抱える課題
冒頭の場面では、ネイルサロンが様々な家庭背景を抱える母親とその子どもたちの癒やしの場になっているという物語かと思っていたが、母子がこっそり逃げ出してシェルターにはいれたと思ったら、女の子の保険証の効力に制限があったり、学校入学にも問題があるような話があり、女の子がボウリング場に取り残され、乱暴そうな男性が家に引き取って、逃亡が失敗したのかな、と思っていると、男性が教育センターに通い始め、そこは単なる食事の提供場所ではなく、親の教育も重要課題としていた。ヘジャブを被っており、イスラム教徒であるとわかる指導者は、熱意を以て子どもたちや親たちと接するけれど、その男性とは擦れ違い、特にしらみのシャンプーの提供や、最後の別れに際しての女の子との抱き合いの場面をみられたことで、かなりの嫌悪感を抱かれたようだった。女の子が三つの文字をつなげて読み、指導者と心を通わせたところは、イタールが失敗した教育実験を取り返した事例とも感じられた。男性は、乱暴な性癖ながらも、食料品を店に無心に行くが断られ、別の店に万引きにはいり、追い出され、たまたま居合わせた若者に八つ当たりする。その辺りで救いはなかったのだろうか。間もなく女の子が唐突に命を落とすことになった。局所局所でじっとみつめる女の子の目が鋭く、幼いながらも演技力を感じた。
障がいのある子どもの固執した行動に批判的な意見を呈した母親は、指導者がクリスマスキャロルを歌わないことにも不満を感じていたようだった。上司からも、家庭の問題に深入りしないことや、インド人の運動への参加を批判されていて、理解を得られず反発していた。母親を説得して、知り合いの医師に紹介し、専門職の支援を受けるようになったが、絵カードと実物の抽象的な照合に、なかなか反応を示さず、参観していた母親も退屈していたところ、急に思わぬ反応を示し、クラッカーの要求であることが判明し、喜び合う。これもイタールの失敗した教育実験の取り返しの感があった。
別の女の子と男の子が仲良しになり、男の子が遠くに引っ越すことになり、発表会に際して女性の歌を歌うかどうかが問題になっていて、性的な問題も抱えていたのだろうか。発表会本番直前に母親が工面してカラオケ機械を調達し、歌を披露できていた。
『ぼくたちのムッシュ・ラザール』は、移民で不器用な教師が自らの在留資格認定の課題を抱えながら、先住民文化に精通した同僚の理解と影響により、子どもとの触れ合いを深めていく展開であった。「モザイク国家」と呼ばれるような多文化主義を標榜するカナダも、色々と問題を抱えているようである。
Spring “H·U·G” come
愛情を感じるビン母子に対し、胸が痛いローラ側の描写を細かく入れ替えて見せる導入。
シルヴィーだけは半歩遅れて出てくる。
中盤にあるローラの過去の挿入の仕方なども含め、やや分かりづらい構成が少し引っ掛かった。
内容としてはドキュメンタリー的で起伏は少ない。
ポスターの3人が揃うのも30分ほど経ってからだし、“出会い”という印象もなく自然にそこに居る。
各々の環境や抱える問題に関しても、説明はない。
しかし察せられる部分だけで、特にローラは見てて辛いものがあった。
一瞬だけ父性が覗いたものの、父は結局ツッパりっぱなしで自滅していくし。
ヒナとのハグでの天使のような笑顔が、父の登場で一瞬にして消えるのがキツい…
(この差が父を追い込んでた面もあるのだろうが)
事故か心中かなどは判然としないが、ローラの死は唐突で、映画ながらかなり喰らった。
ただ、その後がちょっと間延びして感じたので、ジョニーの話は手前に置いた方がよかったかも。
どちらにしても明確に救いのある終わりじゃないし。
ビンやシルヴィーの母にも多少明るい兆しがあったのは嬉しかったが、ビンは転校?
演技に関しては、未経験者たちを起用したとは思えないほど素晴らしい。
特に子供たちは、“大人っぽくならざるを得なかった”面と子供らしさを見事に共存させていた。
感覚としては星4以上を付けたいが、それは実話的に感情移入した面に引っ張られてのもの。
冷静に映画として評価するなら星3.5かな。
でも、子育てや障害他の様々な問題を真摯に描いていて、いい作品だと思います。
社会の「今」を映す『ぼくらの居場所』
物語の前半は、虐待や貧困など、子どもたちを取り巻く過酷な家庭環境を丹念に映し出す。その緊張の糸を張り詰めたまま、後半で訪れるローラの死がその糸を容赦なく断ち切る。
以降、発達障がいやヤングケアラーといった現代日本が抱える社会的課題が、観客に逃げ場を与えないほどのリアリティで提示される。教育・福祉の現場が抱える構造的問題を見せつける、重くも意義深い一本。
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