ナイトコールのレビュー・感想・評価
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夜は決して終わらない
黒人の青年マディは、学生をしながら鍵屋で生計を立てている。
ある夜、若い女性クレールからアパートの入り口の鍵を開けて欲しいという依頼を受け、マディはドアを解錠する…。
見終えた後、「んー」となった。
なかなか良質なクライムアクション映画だったんだけど、ベルギーのアカデミー賞と言われているマグリット賞で10部門に輝く程なのか…。劇中気になっていた事を少し調べてみた。
序盤、終盤にイギリス人歌手ペトゥラ・クラークの「La nuit n'en finit plus」が流れます。
彼女は9歳から歌手活動を始め、1960年代にイギリスの国民的アイドルになった人物のようです。
アイドルとして言われるがままにマイクやカメラの前に立ち続ける彼女でしたが、国民の求める偶像と自身とのギャップに苦しみ次第に歌う事への興味を失っていきます。
そんな折、仕事で訪れたフランスで運命的な男性と出会い、結婚し活動の拠点もフランスへと移行。
そしてタイトルも歌詞もフランス語の「La nuit n'en finit plus」を発表し、フランスのみならずフランス語が公用語の1つであるベルギーでも彼女は親しまれる存在になっていった様です。
歌詞の内容は闇の中、暗い底にいる人間の心情。
物語の背景の1つである「Black Lives Matter」のデモ。主人公マディ、ヒロインのクレア、クレアの兄のテオ。
3人の人生と、ペトゥラ・クラークの人生、「La nuit n'en finit plus」が完璧に交差している。
調べてえがった。
評価がガラリと変わりました。
結末が
派手さはないがキラリと光るクライムサスペンス
カッコいいポスターのクライムサスペンス。このポスターにはワケがある。ベルギーの映画で知ってる俳優がいないから。でもベルギーのアカデミー賞で複数部門とった話題作ということで観に行った。
最近はインド映画も人気だけど、あまり馴染みのない国のコンテンツに触れることは、何かしらの発見がありとても楽しい。今作もブラック・ライヴズ・マターのデモシーンがあり、あのアクションがアメリカだけじゃないと気付かされた。
映画は24時間ひとりで鍵の紛失などのトラブルに対応する鍵屋の黒人青年の話。いつもは、トラブルを解決して感謝される仕事なのに、とんでもないトラブルに巻き込まれる。
さりげないセリフで、彼の普段の生活や周囲の人々との関係性を伝える語り口がうまい。このことが彼がどう考えてトラブルを切り抜けるのか観客に想像させ、物語に引き込まれる。
ラストの着地もエンタメ映画のように終わりよければ全て良しということではなく、きっちり主人公の人間性の発露に落とし込むところが素晴らしい。
配給は、スターキャット。東京在住のボクは知らなかったけど、名古屋の会社で元々プロバイダーから創業し、今はケーブルテレビや映画館運営など幅広く手がけ、年に何本か配給や配信も行ってる様子。
今年は「愛を耕す人」なども配給されたとのことで、こういう派手さはないがいい映画を観ることができて感謝しかない。今後も楽しみにしております。
マフィア?
随分 こじんまり したマフィアです
序盤はどうやってこの難局を乗り越えて行くのか?って期待感が高まりましたが
後半 怪我をした主人公の全力疾走やイーサン ハント並のドライブテクニック、ボスが直接 現場に現れるなど萎えてしまうシーンがあって評価は低いです
ただ主人公が草間リチャード敬太 君に似てて色んな意味で目が離せない!
こういうのでいいんだよ
ワン・バトル・アフター・アナザーで映画の良さを再認識したばかりなのに、全くノーマークのベルギー映画でまた同じ思いをするなんてね。一切情報入れてなかったからどんな話が分からず、2件目の依頼でサスペンスと気づくとか…。
とにかく隙間から見る主観目線の使い方が上手いので見ていて緊張感が伝わるし、EUの首都ブリュッセルでもブラック・ライブズ・マターのデモが起こってるのかー、とかホワイトトラッシュはヨーロッパにもいるのかー、とか色々勉強になりました。
自分的にはどっちかっていうとイスラムの侵食が深刻なイメージだったけどね。
カーチェイスもチャリチェイスも走りチェイスもブリュッセルフィルムコミッションはなんでもやらせてくれるんだなあ…渋谷でもこんな絵撮れたら面白いのにね。足利の渋谷ダブルではダメなんだよなあ。
まあ終わり方は賛否ありそうだけど…尺が90分きっかりなんで!あと一夜の出来事なんで!それだけで映画として最高に素晴らしいです!
忙しくて今月は全然映画行けない中、ちょっとした空き時間に見れる作品で大当たり引いてご機嫌です。
それではハバナイスムービー!
画面から目が離せない良作
冒頭のある点を突っ込むと事件(物語)が始まらないので仕方ないのですが…
そこだけ目を瞑れば、あとはノンストップ。
ハラハラドキドキ。
引き込まれて、画面から目が離せません。
かなりの良作です。
ただ、ラストで「主人公が、ここまで頭キレて賢いのに、なんで最初は迂闊な選択肢を選んでいたのだろう」と、我に返っていろいろ考えてしまい。
そう、バイト先のマニュアル通り、ちゃんと依頼人の身分証明書の確認を行わないから、事件に巻き込まれちゃうんだよ……
日本よりはるかに治安が悪い国でのバイトで、決められた手順には理由があるんだよ、と冒頭における主人公のうっかりじゃすまない杜撰な選択に苦笑いしちゃったのでした。
なかなか面白い巻き込まれ型スリラー
ごく普通の展開と感じてしまいました。
期待し過ぎてしまったかしら。
最初の導入部、鍵屋が騙されるあたりは良かったが、その後の展開は期待し過ぎたせいか失礼ながら既視感のあるようなごく普通の展開。
映画を見終わってしばらくしてこのレヴューを書いてるが、なんかあまりそれぞれのシーン含め記憶に残ってないなぁ。という感じ。
これ作ったヒト、天才。感謝します。
軽く楽しめるようで社会の縮図を投影していたり、なかなか趣深い。最近若い日本人監督の不思議系(あくまで私の解釈なので悪しからず)邦画が理解できず、世代ギャップなのか?とか考えさせられることが多かったので、この作品には「やっぱコレでしょ!コレを観なきゃ!」と喝采を惜しみません。
主人公、良さそうなヤツなのに、こんなヤツでも逮捕歴あったり、なかなか複雑な社会。黒人女が白人の鍵屋を呼び出したらどうなった?帰宅したサムに白人の鍵屋が説明を急いでいたらサムはどうした?いろいろ考えさせられます。大好きなママ?から引き継いだペトラクラークのフランス語曲が最後、ジュリー(女の本名)との会話を想起させ、ヤニック達に刺されてカネを奪われるはずのジュリーを助けに行きます。この主人公の心情と行動、これがこの物語に最上のフレーバーを与えていると思うのでした。結末よりも結末の一歩手前を大切にするフランス系映画(これはベルギー=フランス映画)というありがちなパターンもなかなか好みでした(「ファンファーレ」もそんな感じでした)。
這い上がれなかった者
鍵開け屋の青年がある女性から鍵開けを依頼されるものの、その部屋は実はヤベェやつの部屋であり…といった物語。
ちょっと趣味が合ったからと気を許したが最期、冤罪も良い所の絶望展開がマディを襲い…。
全体を通しテンポも良く、程よくスリルな展開であれど、ご都合主義とツッコミ所は枚挙にいとまがない(笑)
まぁそんなことは考えず、マディの機転を利かせた逃走&追跡劇は見応えがあるし、悪になりきれない人間模様も。
警察に電話…そっと受話器を置くその手。これはやるせないですね…。
そんな事を考えさせながら、ピンチ!!しかしそんな奥のテを残してたか!?んで、漸く一段落、からの…やっぱりそう来なくちゃね!!
90分という丁度よい尺の中でとにかく止まることはないし、それでいて単調にならず飽きのこない作りはお見事!!
しかし、あまりにもマディが不憫すぎる…(笑)
それと、敵側の立場から見れば、嘘とは思えねぇなんて言わずにあの時点でマディを始末しちゃえば良かったんじゃないの!?!?あそこではまだまさかクレールが実は…とは思わなかったのか?
とまぁ、気になるポイントは残しつつも、難しく考えずさっくりと楽しむにはもってこいの作品だった。
しかしいくら何でもこの仕打ち、納得がいかない…
マディが何したっつうんだよ!!!!!!!!
…あ、強盗か。
最後いらないなぁ
ベルギー発、新進気鋭の監督の描くアクション・スリラーの佳作
【イントロダクション】
謎の女性から依頼を受け、とあるアパートの一室の鍵を開けた鍵屋の青年が、マフィアの裏金を巡る問題に巻き込まれていく一夜を描いたベルギー、フランスのアクション・スリラー。
監督・脚本は、本作が長編映画監督デビューとなるベルギーの新鋭ミヒール・ブランシャール。
ベルギーのアカデミー賞と呼ばれる“マグリット賞”にて最優秀作品賞ほか10部門を受賞。
【ストーリー】
ベルギーの首都ブリュッセル。鍵屋の黒人青年マディ(ジョナサン・フェルトレ)は、昼間は学生、夜は鍵屋の仕事で生計を立てる多忙な日々を送っていた。
ある晩、彼はクレールと名乗る女性(ナターシャ・クリエフ)から依頼を受けて、とあるアパートの一室の鍵を開ける事になる。料金は前払いであり、理由があって先に仕事に取り掛かる場合は身分証の提示が規則であったが、クレールは財布ごと家の中に忘れてしまい、鍵を開けてもらわないと料金も身分証も提示出来ないという。
仕方なく、マディは鍵を開けてクレールを中に入れるが、彼女は黒いゴミ袋を持って「お金が無いからATMでおろしてくる。身分証はテーブルの上にある」と言い残してアパートを去ってしまう。テーブルの上を確認するマディだったが、身分証は何処にも見当たらない。そうこうしている内に、クレールから着信が入り、「今すぐそこから逃げて」と指示される。
訳もわからず室内に残っていると、本来の部屋の持ち主であるサムという男(マルコ・マース)が帰宅する。マディの正体を知らないサムは、彼を強盗と勘違いして激しい取っ組み合いになり、命の危険を感じたマディは持って来たドライバーでサムの首を刺して殺害してしまう。
気が動転したマディだったが、警察を呼ばなければと自身のスマホを取り出す。しかし、取っ組み合いで壊れてしまっていた。マディは平静を装ってアパート近くの店の店主から電話を借り、警察に連絡しようとする。しかし、テレビでは市内で行われている人種差別抗議運動“ブラック・ライブス・マター(BLM)”の様子が映し出されており、警官隊が講義に参加している黒人を容赦なく殴打していた。自身も黒人であるマディは、警察に自らの主張を信じてもらえないのではないかと電話を切り、部屋の証拠隠滅を図る。
再び部屋に戻り、証拠隠滅を図るマディだったが、サムを迎えに来た男達を前に逃亡を余儀なくされてしまう。鍵屋の車で逃亡しようとするが、エンストを起こしてしまい、男達に捕まってしまう。
男達に捕えられ、マディは廃墟の中へ連れ去られてしまう。そこには、マフィアのボス、ヤニック(ロマン・デュリス)が待ち構えていた。必死に事情を説明するマディ。女が持ち出したゴミ袋の中身は、サンドバッグの中に隠していた上納金100万ユーロだったのだ。マディの訴えに半信半疑のヤニックは、彼を拷問し、部下であるテオ(ジョナ・ブロケ)に意見を仰ぐ。テオは、マディが嘘を吐いているようには見えないと答え、ヤニックはマディに「朝までに女を見つけ、金を取り返してこい」と命じる。
マディはテオと彼の仲間のレミー(トーマス・ムスティン)に連れられ、サムが通っていた娼館を訪れる。しかし、何処にもクレールの姿はなく、レミーはプレイを邪魔されて激昂した客と殴り合いになってしまう。そんな中、外で電話するテオの姿を目撃したマディは、電話の内容から事件の意外な真相を耳にする事になる。
【感想】
新進気鋭の監督によるベルギー産のアクション・スリラーは、切れ味鋭い佳作として意外な拾い物となった。
監督・脚本のミヒール・ブランシャールは、本作が長編映画監督デビューだそうだが、初監督作にしてベルギー内外で数々の賞を受賞する等、初監督とは思えない確かな手腕を発揮してみせた。
テンポ良く展開され、先の読めない方向へと向かっていく脚本が、最後まで観客をスクリーンに釘付けにさせる。常に「次はどうなる?」という興味を持続させるのは容易ではなく、この“好奇心の持続”を維持させただけでも評価出来るほど。
また、作品を象徴する楽曲であるイギリスのポップシンガー、ペトゥラ・クラークの『La Nuit N'en Finit Plus(夜が終わらない)』の歌詞に対応したマディの成長展開、序盤から丁寧に張られていく伏線、それぞれのキャラクターの抱える事情の提示と、観客に対して非常にフェアな脚本の作りにも好感が持てる。だからこそ、ラストにはもう一捻り(詳しくは後述)欲しいと思ってしまった。
音楽を担当したタンギー・“テプル”・デスターブルの楽曲も素晴らしく、冒頭から一気に観客を物語の世界へ引き込んでくれる。優れた音楽は映画の魅力を一段引き上げる力を持つと改めて感じさせられた。
趣向を凝らしたカメラワークも特徴的で、これには撮影監督のシルヴェストル・ヴァンヌーレンベルへの功績も非常に大きいと思われる。
冒頭、大通りを疾走するマディの車を上空から捉え、やがて画面が回転して映像が逆さまになり、タイトルが表示される。このオープニングシーンの掴み一つで抜群の威力を誇っていた。先述した音楽も相まって「面白い映画が始まった!」と予感させてくれる。
マディがテオ達から逃亡する際に、盗んだ自転車で地下鉄の階段と駅構内を疾走する様子をワンカットで捉えたシーンや、クライマックスでパトカーを引き連れて夜明けのブリュッセルの街中を爆走するマディの車のシーン等、映画的盛り上がりを演出するシーンも印象的で、映画鑑賞の悦びに満ちていた。
キャラクター表現も無駄なく端的に描き出されていき、特に主人公マディと、マフィアの手下テオのキャラクター性が非常に魅力的だった。
マディは母親を亡くし、父親とも連絡を取り合っている様子はなく、恋人とも別れた孤独な青年である。学生生活と私生活を両立させる為に、夜遅くまで鍵屋の仕事をこなさなければならず、食事も仕事の合間に車中で摂らなければならない。気分を上げる為、母の残したお気に入りの曲をコピーしたCDを聴く姿も、彼の根底にある優しさの表現として優れている。
ヤニックに事情を説明しようにも、かつて起こした強盗の前科から素直に信じてはもらえない展開は、脚本的な難関の一つとして機能するだけでなく、彼が「どん底に居る者」という説明にも繋がる。
また、機転の利く姿も印象的で、サバイバル能力も高い事から、変化し続ける事態に臨機応変に対応していき、「常に行動を起こす」キャラクターなのも非常に好感が持てる。そのキャラクター性によって、物語が停滞する事を防ぐと同時に、観客に「次はどうなる?」という興味を持続させるのだ。
だからこそ、彼には自らの命を守る為にテオを犠牲にするような行動を取ってほしくはなかった。その後にジュリーを守る為に覚醒するにしても、別の方法で覚醒させる事は出来たはずだからだ。
彼と行動を共にし、追跡者としての役割も持つテオは、マディと同じく両親が存在しない様子を伺わせ、彼と同じ「どん底に居る者」である事が示される。粗暴なようでいて、マディの主張を「嘘を吐いているようには見えない」と擁護する姿や、妹のジュリー(クレール)を守るべく奔走する姿も好印象。そこには、演じたジョナ・ブロケ本人の悪人には見えないビジュアルも寄与している。だからこそ、彼には最後まで生き残ってほしかった。
混乱の事態を招くクレールことジュリーも、兄想いの妹として「どん底から抜け出してほしい」という願いから盗みを働いた事が明かされる。彼女が、単なるテオの恋人ではなく、妹という設定も意外性の演出と家族というより強固な繋がりの提示として優れていた。
余談だが、クラブ“ブカン”でマディに捕えられた際、彼に強気な姿勢で説教する姿には苛立ちを覚えたので、容赦なく右手にハンマーを振り下ろしたマディはグッジョブである。
他にも、子育てや優雅な生活を維持する為に上納金を納めなければならないヤニックの単なる冷酷な悪人に留まらない人間性、振り回されっぱなしで常に困惑顔を浮かべるレミーと、脇を固めるキャラクターまでそれぞれに見せ場や魅力があるのも素晴らしい。
そんな魅力的なキャラクター達を演じたキャスト陣の熱演にも拍手。
特に、マディ役のジョナサン・フェルトレは、他のキャスト陣より比較的キャリアが浅い中での大抜擢にながら、抜群の存在感を示して見せていた。今後の活躍が楽しみな俳優である。
テオ役のジョナ・ブロケは、3カ国語を話せるトリリンガルな事から、若手ながらも順調にキャリアを積んでおり、原田 眞人監督、司馬遼太郎原作の日本映画『燃えよ剣』(2021)にも出演していた様子。
クレールことジュリー役のナターシャ・クリエフも、ジョナサンと同じくまだまだキャリアの蓄積中ながらミュージカル女優賞へのノミネート等、確実に実力を発揮している様子。ラストで涙を流してアムステルダム行きの列車に独りで乗車する姿だけで、混乱の元凶であるにも拘らず、思わず許してしまいたくなる。
ヤニック役のロマン・デュリスは、フランスを代表するベテラン俳優として存在感を放ち、決して長くはない出演時間ながらも、その風格漂う姿が鮮烈に印象付けられる。
【完成度が高いからこそ感じさせる、クライマックスの“物足りなさ”】
ジュリーを守る為に自らを犠牲にして、警察に撃たれて搬送されるマディ。唯一の肉親である兄テオを失い、持ち出した金を手に独りアムステルダムに向かうジュリー。
マディはヤニックからサム殺しの凶器であるドライバーを押収されており、ヤニックが上納金を納められなかった事から破滅するとしても、マディもまた殺人犯として逮捕される可能性は否定出来ない。
ジュリーもまた、無実の男を巻き込み、兄を失ってまで得た金で、果たして今後の人生を穏やかな気持ちで過ごせるだろうか。
例え、ラストでそれぞれが登る朝日に照らされていたとしても、その輝きを単なる祝福とは受け止められなかった。
また、ヤニック達マフィアと裏で繋がっていた汚職警官のグレッグ(サム・ルーウィック)はお咎めなしである。
このように、彼らの今後の行く末を思うと、決して安易なハッピーエンドとは言えないビターエンドな幕引きとなる。この辺りの結末は、本作がその評価の高さから今後ハリウッド等でリメイクされた場合は、大幅に変更されそうな要素と言える。この鈍い輝きを放つビターな幕引きこそが魅力と言われればそうではあるが、亡くなったテオをはじめ「本来裁かれるべき悪人が、作中でその行為に対する責任を問われない」というのは、非常にモヤモヤとさせられる。
勿論、ヤニックやグレッグをハリウッド的ハッピーエンド演出な勧善懲悪の落とし前をつけさせる必要はない。だが、やはりメインとなるキャラクター達には、本作のテーマが「どん底に居る者」達を扱った「這い上がれるか、落ち続けるか」を描く作品である以上、もっと希望の持てる終わり方をしてほしかったのは間違いない。
というのも、丁寧な伏線描写やマディの機転の利く性格から、ラストはてっきりドンデン返し的な結末を迎えるのだろうと、鑑賞中密かに期待してしまっていたからだ。
贅沢な文句ではあるのだが、やはりエンターテインメントの基本はハッピーエンド(そう見えるだけでも良いので)だと、改めて痛感させられた。
【総評】
ベルギー発の本作は、韓国映画的なジャンルを横断する物語、優れた音楽と撮影と、エンターテインメントとして確かな完成度で、本当に監督は長編初監督なのかと思ってしまうほど。
しかし、だからこそラストの展開にはもう一捻り欲しかったのも確かであり、ビターエンドは玄人向けであると感じた。
とはいえ、出演者や監督の今後の活躍が楽しみである。また、本作はその完成度からハリウッドや韓国で今後リメイクされる可能性もあるので、本作そのものの今後にも注目したい。
全69件中、21~40件目を表示
















