劇場公開日 2025年10月17日

「深夜の呼び出しには気をつけろ」ナイトコール おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 深夜の呼び出しには気をつけろ

2025年10月19日
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鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

■ 作品情報
ベルギーのブリュッセルを舞台にしたクライムスリラー。ミヒール・ブランシャール監督初の長編作品。ベルギーのアカデミー賞であるマグリット賞において、作品賞、監督賞、脚本賞など10部門受賞の快挙。監督・脚本: ミヒール・ブランシャール。主要キャスト: ジョナサン・フェルトレ(マディ役)、ナターシャ・クリエフ(クレール役)、ジョナ・ブロケ(テオ役)、ロマン・デュリス(ヤニック役)。製作国: ベルギー・フランス合作。

■ ストーリー
夜間は鍵屋として働く学生のマディは、ある晩、クレールと名乗る女性から部屋の解錠を依頼される。しかし、その部屋はクレールの所有物ではなく、彼女は部屋にあったマフィアのヤニックのバッグを持ち去ってしまう。直後、部屋の真の持ち主が帰宅して揉み合いとなり、マディは相手を殺害し、ヤニックの部下に捕まってしまう。ヤニックはマディを共犯者とみなし、翌朝までにクレールとバッグを見つけ出さなければ命はないと脅す。無実を証明し生き残るため、マディは混乱する夜のブリュッセルを奔走することになる。

■ 感想
最初から最後までスクリーンに釘付けになる、息をのむようなサスペンスです。予期せぬ犯罪に巻き込まれてしまったマディの身に迫る恐怖と、そこから抜け出そうともがく焦りが、手に取るように伝わってきます。一瞬たりとも目が離せない展開に、ずっとドキドキさせられます。

たった一夜の出来事であるにもかかわらず、その極限状況の中でマディが少しずつたくましく、そして強かに変化していく様子が、とても丁寧に描かれています。彼が命の危険を感じながらも事件の真相を追い続ける姿、そして悪党になりきれない人の良さから再び行動を起こす姿は、人としての弱さと強さと葛藤を描いているようです。

また、マディと同様にどん底から這い上がりたいと足掻くテオの存在、彼らの背景にBLM運動のデモが重ねられていることで、物語に深い奥行きが加わっています。人生の苦さ、うまくいかない現実の厳しさが、胸に迫ります。

結末は決して後味の良いものではなく、破滅していくヤニックたちの姿を見てスッキリしたかったという思いも正直あります。しかし、マディの必死の行動が一人の女性の命を守ったという事実は、せめてもの救いであったと感じます。ただ、もとはといえば、全てあの女が原因であることを思うと、やっぱり複雑な思いが残ります。

おじゃる