劇場公開日 2025年11月28日

「新潮流ホラー×多視点パズル、ピタリとはまる快感」WEAPONS ウェポンズ 高森郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 新潮流ホラー×多視点パズル、ピタリとはまる快感

2025年11月30日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

知的

斬新

ここ10年ほどの米国発ホラー映画にみられる新たな潮流に沿う秀作だ。新潮流の作品群を挙げると、“それ”が追ってくる遅さが斬新な「イット・フォローズ」(2014)、アリ・アスター監督衝撃のデビュー作「ヘレディタリー 継承」(2018)、ジョーダン・ピール監督の「ゲット・アウト」(2017)と「アス」(2019)など。物語類型としては、どこにでもありそうな郊外の町に住む普通の人々が、得体のしれない何かによって日常が変容する出来事に巻き込まれていく。

演出スタイルの面では、前世紀からある強烈なモンスター(巨大生物、凶悪なエイリアン、冷酷な殺人鬼など)による襲撃を突然の大音響も添えてインパクトの強い映像で提示する、テーマパークのお化け屋敷や絶叫マシンのような怖がらせ方とは一線を画す。比較的抑えた演出で、観客の想像と好奇心を刺激しながらじわじわと恐怖をあおっていく傾向が類似し、だからこそ、ここぞという場面でのインパクトが一層効果的になる。

古くは黒澤明監督の「羅生門」、最近では是枝裕和監督「怪物」で採用された多視点でタイムラインを語り直すスタイルも特徴的だ。脚本兼監督のザック・クレッガーによる「WEAPONS ウェポンズ」のストーリー構築術を、こんなふうにたとえることができるだろう。学童の集団失踪、住民の不穏な行動、やがて起こる惨事。これらすべてをもたらす“何か”、いわば諸悪の根源を“軸”とし、ここから生じる渦に巻き込まれた主要キャラクターたちが軸のまわりに貼り合わさって集合体のオブジェになる。クレッガー監督はこれを複数キャラのピースで構成されるパズルに見立てていったんばらし、女教師ジャスティンの視点から順にタイムラインを語ることで、パズルのピースがはまっていくたびに災厄の全貌とその核心が少しずつ立体的に見えてくるよう組み立てた。その緻密な仕掛けは見事と言うしかない。次回作が楽しみな監督がまた一人増えた。

高森郁哉
PR U-NEXTなら
映画チケットがいつでも1,500円!

詳細は遷移先をご確認ください。