「静けさの手前で立ち止まった作品」トレイン・ドリームズ deep1さんの映画レビュー(感想・評価)
静けさの手前で立ち止まった作品
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本作は、扱っているテーマや、映画的文法に則って説明を極力排そうとする姿勢には好感が持てる作品だった。一方で、森林火災によって妻子を失った場面や救えなかったアジア人労働者が繰り返し描かれることで、主人公の葛藤がやや直接的に示されている印象も残る。すでに作中にもあるような、より静かな日常の描写―例えば、朝目覚めたベッドで上体を起こしたまま、うつろに部屋の片隅を見つめ続けるだけのカットなど―をもっとそれの代替として増やすことによって、同じ感情を別の形で伝える余地もあったように思う。
また、終始第三者視点で語られるナレーションについて、その語り手が誰なのかが最後まで提示されず、説明を避ける姿勢を理解しつつも、構造的な着地点の欠如を感じた。(よき理解者で友人であった売店の店主だという解釈か?)
終盤、飛行機に乗り世界を見渡すことで主人公が自分を受け入れていく展開は、象徴としては分かりやすい一方で、物語の内側で積み重ねられてきた内省とどのようにつながっているのか、もう一歩余韻を残す描き方も考えられたのではないかと感じた。全体として誠実な試みではあるが、最後の一線で踏み込みきれなかった印象があった。
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