配信開始日 2025年11月21日

「人の世の儚さと愛おしさが身に染みる」トレイン・ドリームズ 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 人の世の儚さと愛おしさが身に染みる

2025年11月30日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

ピューリツァー賞候補にもなった小説をジョエル・エドガートン製作総指揮&主演、『シンシン/SING SING』('23年)で知られるクリント・ベントリー監督で映画化した本作は、アメリカの近代史を生きた1人の季節労働者の人生にフォーカスしている。

家庭の温もりを知らず、鉄道会社による森林伐採を請け負う男が、やがて、愛する人と巡り合い、子供にも恵まれるが、その後、不幸のどん底に突き落とされるものの、やがて、時代の変化を潜り抜けてきた自らの半生を肯定するに至る。彼がその間垣間見たのは、文明による自然破壊、人種差別と暴力、第一次大戦による経済不況、そして、人の世の儚さだ。

台詞を極端に少なくして、一見不運にも見える主人公の人生を介して語りかけてくるのは、より大きな視点から俯瞰すると人間の営みとは何と小さな出来事かということ。そういう意味で、見終わると妙にポジティブな気持ちにもなれるのだ。

主演のエドガートンは勿論、彼が出会う忘れられない人々を演じる脇役たちが素敵すぎて、切ない気持ちになる。すでに本年度のゴッサム・アワードで長編映画賞と脚色賞にノミネートされていて、オスカーにも絡んでくる可能性が高い。

清藤秀人