劇場公開日 2021年12月10日

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「単なる鬱映画ではなかった。」ダンサー・イン・ザ・ダーク osincoさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0単なる鬱映画ではなかった。

2022年6月11日
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鑑賞方法:映画館

今月で上映権が切れるとのことで、最後の劇場上映に行ってきました。
絶対好きなはずなのに見逃していた作品。

鬱映画と名高いので、鬱々してやろうと意気込んで行ったら、超名作。

スタートの模様が浮かび上がっては変化していくのは何を表していたんでしょう。その映像からも良作の予感がしました。

手ブレ激しめのホームビデオ風の画面の揺れも、おそらく計算なのでしょうが、前から3列目で観たら少々酔いました。

機械工場のシーンでは危ないフラグがいっぱいあって、ヒヤヒヤしました。てっきりラストもそこで事故でも起こるのかと思ったら全然違いました。

ミュージカルの挟み方がすごい。
ビョークはもちろん息子ちゃんも美声。
非現実的な妄想の世界を表現できるのが、映像のおもしろさなんですね。誰もが見たことがあるはずの、夢の中のような、不思議な世界を具現化…って、実際はそうとう大変だと思うのですが。。

セルマよ、、なぜそんなに頑ななんだ。
不器用すぎて、不憫すぎて、ドクズ野郎が出てきて、モヤモヤすることは多々あります。
とんでもなく優しい友人や看守さんも出てきます。救いがない映画だと聞いていたので、救いはあったと思います。ただ、リアルに助ける方法、無かったんでしょうか。

個人的に、"不言実行の人"、めちゃくちゃかっこいいと思ってるんです…いやいや、でも、きちんと言葉にしなくちゃいけないこともあるんですよ。
守るものがあると、そんなに強くなれるものなんでしょうか。

これって観客は、セルマのことを見続けているし、真実を目にしているから同情しますけど、もしこれが身近のどこかで起こったとして、盲人女性により警察官が強盗及び殺害されたと報道で聞いたら、、?
世の中の事件の大半は真実が見えない中で、裁かれていくのですよね。。
事件だけでなく世の中の大半は、何もわからないのかもしれません。
現実の方がもっと残酷かもしれません。

ラストシーンでは、小林薫さんと、西島秀俊さんの『休暇』を思い出しました。そちらの印象が強かったので、終わりの静けさに少し疑問もありましたが、あれでこそラストには相応しかったのかもしれません。

それにしても、1960年代のアメリカでは、知り合いがあの場に立ち合うんですね…

エンドロールの、名前と画像を合わせた演出は良かったです。出演者をしっかりと確認したくなったので。

ピースの又吉さんが『ゴッド・ファーザー』を観た時、「どうせ映画好きにしかわからないこだわり映画の類だろう」と敬遠していたけど、観たらめっちゃおもろいやん、なんでもっとみんな早くみた方がええでって言ってくれなかったんやろ、と話していたのを思い出しました。

とりあえず、名作と言われるものは、観ておかないといけないな、と思いました。

#名作の順番待ちがハンパない
#ミニシアターばかり行きがち
#陽より陰が好き

osinco