「常に最悪の想定をして衝撃に備えよ。」ダンサー・イン・ザ・ダーク せつこんさんの映画レビュー(感想・評価)
常に最悪の想定をして衝撃に備えよ。
自分と同じようにいずれ視力を失ってしまう息子のために手術費用をコツコツ溜めるシングルマザーで移民のセルマが、そのお金を盗まれたことから悲劇に見舞われる話。
この映画に必ずついてまわる「鬱映画」「二度と見たくない映画」というフレーズに最初から身構えていたので、常に次の展開の1番最悪なパターンを考えながら見るとかなり防御になる。
ちなみにどんなことを予想してたかと言うと、セルマは機械に手を挟んで腕無くなってるし、セルマに思いを寄せるおじさんにレイプされてるし、病院に渡したお金も警察に見つかって息子も失明する、という感じ。書き起こしてみると自分の予想が残酷すぎて引いた(笑)
確かに残酷なラストではあるけど比較的皆良い人。周囲の人は精一杯セルマのことを助けようとしていたけど、セルマ自身の決意が揺らがない限り絶対助けられない。そこが1番救いがないのかなと。私もどうすればセルマを助けられるか考えてたけど全部詰んだから無理。
そしてセルマ自身も純粋に息子のために精一杯生きている人なのだが、自分の内面に閉じこもって自分の考えに固執しすぎているのがかなり問題。事態が酷くなるほどミュージカルシーンが増えたり、秘密を多く抱えているのもそのせい。
息子のことだって、手術だけが解決策じゃなくて目が見えなくなることが必ずしも不幸ではないことを教えることもできたはず。だってセルマ自身がそうだったじゃん。遺伝があるのを知ってて息子を産んだのが問題なのじゃなく、お金を稼ぐ覚悟はできてたけど、息子と向き合う覚悟が出来てなかったのが問題だと思うな。
純粋な人が必ずしも正しい訳では無い、正しい人が良い人な訳では無い。これって私たちが普段生きてる現実をそのまま描いただけじゃん?って思った。