「【”月と太陽。”今作は自分の境遇に不満を抱え且つ自信が無い女子高生が”机友”と同じ男子を好きになり様々な経験をする中で、現実から逃げず嘘をつかず前向きに生きるようになる様を描いた青春成長物語である。】」ひとつの机、ふたつの制服 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”月と太陽。”今作は自分の境遇に不満を抱え且つ自信が無い女子高生が”机友”と同じ男子を好きになり様々な経験をする中で、現実から逃げず嘘をつかず前向きに生きるようになる様を描いた青春成長物語である。】
■1997年、台北が舞台。
本命の高校受験に失敗し、教職を持つ⺟の勧めにより名⾨⼥⼦校「第⼀⼥⼦⾼校」の”夜間部”に進学したアラレちゃんみたいな大きな眼鏡が可愛い⼩愛:シャオアイ(チェン・イェンフェイ)。
夜間部がある学校あるあるの、同じ教室で同じ机を使うことになった全⽇制の成績優秀な⽣徒、敏敏:ミンミン(シャン・ジエルー)と、⼩愛は机に⼿紙を⼊れるやりとりから“机友”になる。
夜間と全⽇制では制服は同じでも、胸の刺繍の⾊が違う。
ある⽇、⼩愛は敏敏とお互いの制服を学校のトイレで交換し、ふたりで学校を遊びに⾏くようになるが、やがて同じ長身のバスケットが得意な男⼦校⽣ルー・クー(チウ・イータイ)を想っていることに気づいていき、二人の関係は微妙になって行くのである。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・今作を観ていて気持ちが良いのは、登場人物が色々な悩みや葛藤を抱えつつも、皆、根が善なる所であろう。
・キャラクター設定も良く、特に⼩愛:シャオアイは際立っている。亡くなった父が友人の連帯保証人になったために借金を背負い(はっきりとは描かれないが、母の台詞から分かる。)貧乏暮らしをしている家庭環境への不満や、自分に対しても第一志望の高校に入れずに、将来の事を考える母の勧めで名⾨⼥⼦校「第⼀⼥⼦⾼校」の”夜間部”に進学した事を、何処かで悔いている姿を、チェン・イェンフェイさんが可愛らしく演じているのである。
・全⽇制の成績優秀な⽣徒、敏敏:ミンミンを演じたシャン・ジエルーさんも、それを鼻にかける事無く、⼩愛:シャオアイと友達になる綺麗な女子高生である。
ー だが、彼女も学年トップの美人さんには憧れと、嫉妬に似た気持ちを持っているし、最後半に彼女自身の口から明かされる、一浪して「第⼀⼥⼦⾼校」に入学した事を告げるシーンで、彼女が何故に⼩愛:シャオアイと仲良くなったのかが明らかになるのである。設定が上手いなあ。ー
■そんな二人が、長身のバスケットが得意な”スター・ウォーズ好きの”男⼦校⽣ルー・クーに惹かれて行く姿。そして、ルー・クーが、⼩愛:シャオアイの事が好きと分かった時に敏敏:ミンミンが、⼩愛:シャオアイが隠していた「第⼀⼥⼦⾼校」の”夜間部”に通っている事を、ルー・クーの母の絵の展示会で皆の前で話してしまう姿には、彼女の気持ちも良く分かるし、何とも言えないが、実は一番後悔しているのは、敏敏:ミンミンじゃないかとおもったのだよなあ。
・⼩愛:シャオアイは家計を助けるために、日曜日は卓球場でアルバイトをする良い子である。序でに言えば、レンタルビデオ屋に通う映画好きの良い子でもある。彼女がニコール・キッドマンに憧れて、ビデオ店の英語が得意な超君に、英文で手紙を出してもらうシーンと、超君が⼩愛:シャオアイの事を思って書いた返事の手紙の”ロブスター”の話なども良いのだな。⼩愛:シャオアイは真実を知って傷ついてしまうのだけれども。
ー この映画は1990年代の映画も頻繁に登場するところも、何だか嬉しいのである。-
■⼩愛:シャオアイが高校三年になり、母が涙ながらに話す、自分を含めた家族の事を大切に思う想いを聞いた時に、彼女は少し成長するのである。
そして、彼女は統一試験に臨み、見事に合格するのだが、このシーンの描き方もとても良いと思う。ジャン・ジンシェン監督は新聞紙上を必死に見て、自分の名前を見つけて喜ぶ⼩愛:シャオアイの姿を撮り、何処の大学に合格したかは映さないのである。ここは、どこの大学に入ろうとも、喜びを感じられるようになった成長した⼩愛:シャオアイの姿を端的に見せていると思うからである。
彼女はもう、何処の大学が良いのかと言う範疇を越えて、自分の未来が開けるであろう大学合格を素直に喜べる女性になったのである。
<今作は自分の境遇に不満を抱え、且つ自信が無い女子高生が、”机友”と同じ男子を好きになり様々な経験をする中で、現実から逃げず嘘をつかず生きるようになる様を描いた台湾青春成長物語なのである。>
<2025年12月14日 刈谷日劇にて鑑賞>
■「刈谷日劇」の近くには、県内でも屈指の進学校がある。
私服だったので、推測であるが私の斜め後ろに座った若き女性が途中から、啜り泣きをしていたんだよね。
今は受験生にとっては苦しい時期だもんなあ、と勝手に思いつつオジサンは
”どこの大学に入るかよりも、大学で何を学ぶかが大切だよ。”などと自分の大学時代を棚に上げて、少し考えながら、優しい気持ちで映画館を後にしたのである。
敏敏も「夜間に詳しい」とだけで核心は避けてたし、路克にクラスを偽っていたことなども知らなかった。
全員そこまで強い悪意を持った行動は取ってないんですよね。
むしろ小愛が見栄を張ったことがそもそもの原因、というところに収束する流れもよかったです。


