劇場公開日 2025年10月31日

「劣等感を乗り越え自分を変えようとする姿は尊い」ひとつの机、ふたつの制服 kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 劣等感を乗り越え自分を変えようとする姿は尊い

2025年11月8日
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鑑賞方法:映画館

本作を観て思うのは台湾も学歴を求めてかなりの努力が必要だということ。日本よりも韓国の学歴社会にイメージが近い。有名な進学校に入学するため高校浪人するってのは日本ではあまり聞いたことがないし、ましてや日本の有名進学校に夜間部なんてないし。
全日制と夜間部が同じ教室を使うため、同じ机を使う生徒たちが机友(実際は違う呼び方をするようだが)になるという慣習から生まれた物語。90年代後半の台湾の姿がリアルに描かれている気がした。知らなかったが、Mayday(五月天)というバンドも台湾の有名なバンド。彼らがデビューする前のライブを観に行くエピソードは、台湾の人にしたらものすごく身近に感じられるんだろう。「花道と流川のどっちか好き?」って質問で、日本の文化が台湾に浸透していることも伝わる。いろいろとリアルなんだよな。この脚本は自伝なのか?と思うくらい。
夜間部に入学した小愛が、机友である敏敏と仲良くなるのだが、全日制の生徒への劣等感と敏敏への憧れが入り混じる中、同じ男の子を好きになってしまうという流れ。小愛がいろんな場面で自らの状況を、そして自らの気持ちを偽るという話。嘘をついてしまった小愛の気持ちも理解できるが、そんな嘘はどんどん自分を追いつめるだけと理解している今の私(そして大多数の観客)は切ない気持ちになってしまう構図。でも、自己評価の低い小愛が劣等感を乗り越え、自分を変えていく姿は尊い。
正直、終わり方に少しだけ不満もある。恋の行方は?とか、どの大学に合格したの?とか。自伝的な映画だとその後の彼らの姿にも触れたりするのに。いや、でも高校時代の彼らを描くということが目的だったならこれでいいのかもしれない。彼らの高校時代を疑似体験し、切なくなったり、希望を胸に前に進もうと思えただけで満足すべきなんだろう。いい映画だった。

kenshuchu