劇場公開日 2025年10月17日

「休日にこうしてスケジュールを調整して、少なくとも球場に集まって来られる程度には健康体をキープしている時点でまず偉いのである」さよならはスローボールで えすけんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 休日にこうしてスケジュールを調整して、少なくとも球場に集まって来られる程度には健康体をキープしている時点でまず偉いのである

2025年10月26日
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鑑賞方法:映画館

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地元で長く愛されてきた野球場<ソルジャーズ・フィールド>は、中学校建設のためもうすぐ取り壊される。毎週末のように過ごしてきたこの球場に別れを告げるべく集まった草野球チームの面々。言葉にできない様々な思いを抱えながら、男たちは“最後の試合”を始める…(公式サイトより)。

公式サイトのイントロダクション文以上でも以下でもない、特に何も起こらない映画。だが、中年になってもなお、特にチームスポーツを楽しんでいる人なら共感ポイント目白押しの作品だ。

スポーツは最終的にはどっちが強いか決める。それはメジャーリーグでもおじさん野球でも同じである。だが、おじさん野球の場合は、休日にこうしてスケジュールを調整して、少なくとも球場に集まって来られる程度には健康体をキープしている時点でまず偉いのである。次に、ビール腹だろうが、腰が痛かろうが、いま持っている技術と身体能力で、勝利に貢献しているかどうかはいったん置いておいて、とりあえずその場は一生懸命やっているのも偉い。何よりも、粗野で低俗な言葉を吐きながらも、20人近いメンバーと人間関係を良好に維持できているところも偉いのである。

試合の合間に交わされる、浅そうで深そうでやっぱりそんなに深くない科白のひとつひとつも絶妙だし、選手の散漫な集中力を示すような、野球とほとんど関係のないカットも秀逸。ピザ屋のおやじはこの仕事は好きじゃないし、ガキは隠れて煙草を吸おうとするし、球場つぶしてできる学校なんて要らないと強がる。突然、ドラマチックなBGMが流れたり、そこまで必要とは思えないスローの映像演出も妙で可笑しい。もやは勝利を決するために野球をやっているのか、野球をやっていること自体が目的なのか、よく分からなくなる展開も素敵である。後半、やや愚鈍な展開になるのは、たぶん、選手たちの「ダラダラ」を観客に追体験させるためであろう。

えすけん
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