劇場公開日 2025年10月17日

「もっと人間ドラマの要素があっても良かったのでは?」さよならはスローボールで tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0 もっと人間ドラマの要素があっても良かったのでは?

2025年10月18日
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「おじさんたちが草野球をするだけの映画」という触れ込みだったのだが、本当にそれだけの映画であったことに、逆に驚いてしまった。
実際、たまたま通りがかったグラウンドで、知りもしないチーム同士が草野球をしているのを眺めているような雰囲気は楽しめるし、どちらかのチームを応援するでもなく、下手は下手なりに一所懸命プレーしている選手に拍手を送りたくなるような気分を味わうことができた。
ただ、いくら「野球はドラマ」だとは言っても、野球の試合(スコアボードが映らないので、試合の経過がよく分からない!)にしても、選手達の生き様にしても、もう少しドラマチックな展開があっても良かったのではないかと思ってしまう。
確かに、審判が帰っても、日没でボールが見えなくなっても、試合を続行しようとする選手達の姿は面白いし、車のヘッドライトを照明代わりにするところは、この映画で最も笑えるシーンでもあったのだが、だからといって、それで、試合の展開や、選手達の人間模様がドラマチックに盛り上がったかと言えば、はなはだ疑問に思わざるを得ない。それどころか、疲れてやる気をなくす選手や、勝手に帰ってしまう選手も出てくる始末で、暗闇での試合が何だか苦行に見えてくるのだが、ここは、もう少し、「最後の試合をいつまでもやっていたい」という空気感を出せなかったものかと思えてならない。
途中から審判を務めることになった老人が、どうして、あの球場の試合を欠かさず観戦して、その経過をスコアブックに記録していたのかとか、試合の中盤でリリーフとして登板した謎の老人は誰だったのかとか、野球のルールを知らずに観戦していた2人組の若者はどうなったのかとか、色々と気になるところも多いし、原題にもなっている超スローボールがストーリーに活かされていたとも思えない。
そうしたところは、あえて「作り込む」のを避けたのかもしれないが、それでも、なくなる球場や、最後の試合に対する哀惜の念のようなものが感じられなかったのは、物足りないとしか言いようがない。
例えば、途中から審判を務めた老人が、球場に通い詰めていた理由がラストで明らかになっていたら、その理由次第で、もっと奥の深い物語になり得たのではないかと、残念に思ってしまった。

tomato