「ドキュメンタリーを観ているような臨場感」ハウス・オブ・ダイナマイト もぐさんの映画レビュー(感想・評価)
ドキュメンタリーを観ているような臨場感
「ある瞬間」までの数十分を、それぞれの現場を変えながら繰り返し見せていく。この映画の凄まじさは、ミサイル防衛大隊フォートグリーリー、ホワイトハウスのシチュエーションルーム、FEMAなどにいる職員たちが、ごくごく普通の生活者であることを短い情報の断片で鮮やかに描いてゆくところにある。そして彼らが普通の人間である事が強調されるほど、「その瞬間」の意思決定は人間のキャパシティを完全に超えてしまうということが浮き彫りになっていく。カメラはアメリカ戦略本部、安全保障会議、国防長官、そして最後は大統領と意思決定の中枢に迫っていく。大統領の代わりに電話に出ざるを得なかったNSC職員とロシア外相との会談は、命綱無しの綱渡りを見るような緊迫感がある。彼らの言葉選び方一つに、私たちの命がかかっているような、そんな緊迫感である。
登場人物たちは高いストレスにさらされながら、家族に電話をかける。それぞれ素晴らしい演技で印象に残るが、その中でも特に、これドキュメンタリーでは?と思わされた演技が、国防長官が娘に電話かけるシーンである。
カメラワークの力かもしれない。でも、素晴らしかった。彼があんな選択をしてしまうことへの説得力が、あのシーンにはあった。それを確認するためだけにでも、この映画は観て欲しい。
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