「ICBMの脅威。」ハウス・オブ・ダイナマイト akkie246さんの映画レビュー(感想・評価)
ICBMの脅威。
どこから発射されたものかわからない大陸間弾道ミサイルを軍のレーダーが補足したところから始まる。複数回同じ時間が繰り返され(三回)、シチュエーションルームの海軍大佐、米国大統領、国務長官、国家安全保障問題担当大統領副補佐官のジェイク、報復戦略顧問、彼らの家族等の立場からその苦難の十数分を三回、我々は経験することになる。(緊張感が続くのでしんどい)
大陸間迎撃ミサイル(GBI)による撃墜が失敗し、あとは想定される被爆地の市民を非難させることと、どこに報復するのか、そもそも報復をすべきなのかということが問題にされる。
綿密なシナリオで、いかに事前勧告のないミサイル発射が脅威となりうるかをコンパクトに二時間にまとめている。(物語自体はそれほど難解ではないが、「銃弾を銃弾で迎え撃つ」という行為の不合理さに直面した当事者たちの困惑と恐怖。)
911テロとも似ているが、シカゴという都市が一つ壊滅してしまうことへの報復をいかにとるべきなのかが問われる。「報復行為は、自殺」であるというジェイクの言葉がささる。
登場人物がいり乱れており、24シリーズなどの多視点ものである。
本作品では、明確にロシア、中国からの攻撃とは言われておらず、北朝鮮からのものである可能性を主軸にしているように思う。(あくまで可能性)
なぜロシアや中国からではないのか。一度核戦争というタガが外れた世界では、報復の連鎖でアメリカの諸都市が壊滅する可能性が高い上に、ロシアや中国もそれなりの報復を受けることが自明だからだ。
あらためて、核戦争の恐怖を描いた点で、最高評価をつけたいところであるが、サスペンスとして、また、登場人物たちがあまりにも通り一遍の描き方をされていた点がもったいなかった。仕方のないところもあるだろうし、アメリカ国内だとまた見方も変わるのだろうけど。
企画と編集、音楽には5点。シナリオに4点である。
たとえばであるが、この繰り返し三回を四回とか五回にしてしかも平行する別次元の可能性を探るような風にしたらさらに名作になった気がする。しかしその場合でも、最悪の結果と最良の結果をやることになり、結局は観客の想像力に頼るしかなくなるのだが。「湖におちた場合」は着弾しても爆発しないという示唆は、ジョークになりそうだけど、日本が被弾する可能性は低いとはいえ、北朝鮮がなにをやらかすかは未知である、
必見。
