「民主党国策映画」ハウス・オブ・ダイナマイト 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

2.5 民主党国策映画

2025年10月30日
PCから投稿

シカゴに核弾頭が着弾するという状況に直面する各部署の様子。
ホワイトハウスと迎撃要塞と国防長官と国家安全保障担当補佐官と空軍基地と大統領。時間を戻しながらそれぞれの模様を描く手法で、映画は核弾頭が着弾する直前で終っている。
名手キャスリンビグローが演出していて緊迫した描写はさすがだったが、結論としてはみんなうろたえすぎ。なにしろみんなうろたえすぎというところに尽きる映画だった。
むろん核がおちてくるわけだから、ある意味世の終わりを実感しなければならない状況ではある。とはいえ、ここに出てくる人たちはアメリカの枢軸であり戦争や情報戦のプロフェッショナルなわけである。そういう人らが、ドリルじゃない核攻撃に対してうろたえまくり、がっつりエモーショナルになって家族に連絡したりする様子はみっともなかった。もちろん極限状態に陥った人間の脆弱性を描きたいというのは解るが、あちこちで戦争をやってきたアメリカがデフコンにこれほど情緒的であるはずがないというのが率直な感想。じっさいにこんな状況になれば、もっとドライにことを運ぶのであって、そうでなければ国防なんか成り立たない。なに妻や夫や娘に電話してんだよ、シャキッとしろやシャキッと、という感じだった。それはわたしがドライなわけではなく映画が情緒的すぎるからだと思ったのだが、批評家評はだいたい好評で深刻かつスリリングな展開をほめていて、Consに振った評でも情緒的とかうろたえすぎを指摘した意見はなかった。
imdb6.8、RottenTomatoes79%と77%。
デフコンをあつかう人たちがこれほどヒューマンな情緒に左右されるわけがなくビグローや作家のノアオッペンハイムはアメリカは鬼じゃないよと言いたいのであり謂わば民主党の国策映画になっていたと思う。ハリウッド全体がトランプ嫌いなのは映画づくりには好適な状況なのかもしれない。

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津次郎