「大統領のキャラ設定が中途半端?」ハウス・オブ・ダイナマイト 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
大統領のキャラ設定が中途半端?
アメリカが東アジア周辺国から大陸間弾道ミサイルを撃ち込まれた際の混乱を描いた作品でした。構成は「アラスカの軍事基地 → 司令部 → 国防長官 → 大統領」と場面が移り変わる形式で、場面が変わるたびに時系列がリセットされるという独特の仕掛けが特徴でした。最初はこの構成にかなり戸惑いました。
もう一つ印象的だったのは、大統領(イドリス・エルバ)がなかなか姿を現さないこと。大統領をはじめ関係者らが参加するオンライン会議の画面では、大統領の顔は常にOFFのままで、声だけが聞こえます。その声が、どう聴いてもトランプそっくりのダミ声で、話し方までそっくり。ところが満を持して大統領が姿を現すと、なんと黒人大統領という意表を突く演出。さらにエンドロールを確認すると、会議中の大統領の声はイドリス・エルバ本人ではなく、別の人が担当していたらしいことが判明。つまり、意図的に「トランプ風の声」を演出していた訳です。この仕掛けにどんな意味が込められていたのか――いまだに謎のままです。
物語は、アメリカ軍自慢の迎撃ミサイルが外れ(イージスアショアをアメリカから買う日本、大丈夫?)、敵の大陸間弾道ミサイルがシカゴを目指して一直線に迫るという展開へ。ミサイル探知から着弾まで十数分という設定ながら、場面転換のたびに時間がリセットされるため、緊迫感を持続させる効果は十分ありました。
ただ、アメリカ軍内部は上から下まで動揺を隠せず、よくある映画的な「英雄」が一人も登場しないのも特徴的でした。声だけの時はトランプ的な強気キャラかと思われた大統領も、姿を見せてからは逡巡の連続。国防長官に至っては、愛娘の安否に気を取られ、ついには屋上から飛び降りてしまう始末。現場の軍人たちも極度の緊張の中で迎撃ミサイルを発射するなど、「さすがにここまで混乱しないだろう」と突っ込みたくなる場面もありました。
そして物語は、大陸間弾道ミサイルがシカゴに着弾する直前、そして大統領がどのような報復するかを決断する前にエンディングを迎えます。観客それぞれに結末を委ねる構成ですが、一般市民の立場からすると、ミサイルが迫っていることすら知らされていない設定のため、「一体何をどう考えればいいのか」がやや不明瞭でした。
また、「声はトランプ、見た目はオバマ風」という大統領像も中途半端で、作品世界に入り込みにくい要因になっていました。むしろ、“トランプ的な大統領のもとでアメリカ本土がミサイル攻撃を受けたらどうなるか”というシミュレーションに徹してくれた方が、より明快でリアリティのある作品になったのではないかと思います。
そんな訳で、本作の評価は★2.4とします。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。