「Sailor,Sail On」迷宮のしおり ブレミンガーさんの映画レビュー(感想・評価)
Sailor,Sail On
東京国際映画祭のタイミングで観に行きたかったんですが満席だったので見逃してしまい、来年だな〜と思っていたところに試写会当選のメールが来て歓喜。
ありがとうNewtypeと拝めながら鑑賞。
マクロスシリーズは見ていますが、アクエリオンはまだ触れたことのない人間です。
これはこれは…中々にカオスな作品で、SNSでのバズりをメインに現代の生活にとって必要不可欠となったスマホを巡る話でもあるので、テーマ的にどう広げるのかと思いましたが、風呂敷の広げ方がはちゃめちゃでついていくので精一杯のところにトンデモ要素をぶち込んでくるので中々に大変でした。
Tiktokのバズりで同級生がバズってるのに自分はバズらないと悩んでいるしおりのスマホにヒビが入り、大きく割れたタイミングでスマホに取り込まれてしまい、そこで出会ったスタンプの小森と共に元の世界へ戻るための手段を探す、一方現実ではしおりのエゴが具現化したSHIORIが闊歩しており…といった感じで面白くなりそうな展開なんですが全体的に跳ねずの展開が目立ってしまっていました。
SNS自体積極的にやってる訳ではなく、いいね数やフォロワーへの執着もそこまでない自分としては、そこまで追い求めて悲喜交々する生活って辛くない?と思ってしまいましたし、根本的に授業中にスマホをいじるなよというところから飲み込めずじまいでした。
もう一人のSHIORIのいいねへの承認欲求凄まじすぎない?と引いてしまったり。
高校生なんて何年も前ですが、今の子達ってこんな感じなのかな…あくまでイメージであってほしいなと思ったりしたり。
スマホの中の世界も荒廃した横浜ってこと以外そこまで未知の世界って感じがしないですし、承認欲求モンスターがスマホの中の世界に閉じ込められ、プレス機かなんかで押し潰されてシールにされるグロテスクな描写も末端に過ぎなかったなという印象です。
河森監督の過去作のオマージュというかモノホンが突然入ってくるので困惑しますし、そこまでそんな要素は無かったのに突然大型ロボバトルなんか始まっちゃうので思わず笑ってしまいました。
歌要素も入ってくるのでいよいよマクロスシリーズと化してきちゃうんですが、あちらと違ってこの世界のキャラクターにハマれてないので歌もしっくり来ずなのが残念でした。
終盤の展開も感動的には仕上がっているのですが、承認欲求モンスターが承認欲求モンスターである事には変わらない感じだったので、変に恋愛を絡めたあたりも着地点はフワッとしていたなと思いました。
アニメーションはサンジゲンが手がけているのもありハイクオリティな3DCGが展開されるので見応え抜群ですし、コミカルな表情やダンスシーン、戦闘シーンなんかもド派手なので大きいスクリーンで観る価値のある映像は確かにあると思います。
声優陣はメイン組は殆どが本職ではないので、そこんとこどうなるかな〜と思いましたが、あんましよろしい方向には行ってなかったです。
SUZUKAさんは一人二役という難しい役どころだったのですが、そこまでキャラクターの変化が無く、声質も可愛いにもかっこいいにも振り切れてない微妙なラインで一人芝居の場面も多いのであんまりでした。
悪い方で意外だったのが齋藤潤君でかなり聞き取りづらいかつ幼さの目立つ声なのがとってもアンバランスで共感生羞恥の域に達していたなと思いました。
直近の出演作がとても良かっただけに、声の演技とは相性が悪いのかと思った次第です。
泰造さんや伊藤蒼さんはキャラにも合っていましたし、聞き取りやすかったので良かったです。
予想外に良かったのが寺西さんで、気だるげなキャラクターが潜ませる狂気さが宿っていてめっちゃ良かったです。
一部セリフ怪しいところもありましたが、全体通して好演だったと思います。
背景の声は本職の声優陣を起用しているので、この人たちをここで!?という数多のアニメに関わってきた河森監督だからこそ成せる技だな…と感じました。
キャスティングは河森監督のオリジナルアニメ映画初挑戦というところを共有したいというところで初挑戦組を起用したというのはなるほどなぁと思いましたが、せめて上手い人・キャラに合う人を連れてきてくれ…と思いました。
上映終了後に河森監督のトークショーがあり、今作の制作の経緯などを聞けて良かったですし、河森監督がおっとりした方だったのでトークショーもゆったり聞けて和やかな雰囲気で良かったです。
この人のどこからこのカオスが生まれるんだろう…と不思議にも思いましたが。
オリジナルアニメ映画でしか得られない栄養は確かにありますし、まだ見ぬ世界の開拓ができるので良いんですが、掴みどころのない作品があるのも確かなので今作の肝はあんまり掴みきれなかったかなぁと思いました。
公開されてからの評価がどう転ぶのか、今から楽しみです。
鑑賞日 12/16
鑑賞時間 18:30〜20:25
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