「役者さんの好演が印象的な作品です」彼の瞳に映る僕 ChiiKAMOさんの映画レビュー(感想・評価)
役者さんの好演が印象的な作品です
主人公・風吹は、ゲイであること以外はどこにでもいる“普通”の大学生です。しかし、彼にとってその「ゲイであること」もまたごく自然な“普通”の一部。けれども周囲の“普通”とは少しずれがあり、その違いゆえに誰にも打ち明けられずに悩んできたのだろうと、北澤さんの繊細な演技から強く伝わってきました。
そして何より印象に残ったのが、幼なじみ・奈那を演じた高井千帆さんの存在感です。風吹から「彼女ができた」と報告を受けた際、笑顔で祝福しながらも、心の奥で静かに失恋していく奈那の複雑な感情を、ほんのわずかな表情の揺れや間の取り方で見事に表現していました。涙を流すシーンがなくても、観る側が自然とその痛みを感じ取れるほどの説得力。彼女の目線の動かし方や、沈黙の中に漂う空気まで計算された演技に、若手女優としての高井さんの底知れぬ表現力を感じました。
物語の中心はどうしても風吹と海斗の関係にフォーカスされますが、その中で奈那の存在がしっかりと作品全体の温度を支えているように思います。風吹と奈那の関係性や、二人の間に流れる“時間の積み重ね”がもっと見たくなるほど、奈那というキャラクターに深みを与えていました。
物語の終盤、奈那は風吹からカミングアウトを受け、恋愛感情としては報われません。しかし、それでも彼を理解し、親友としてそばにい続ける姿勢に、彼女の強さと優しさが滲み出ています。高井さんの演技があったからこそ、この友情の美しさや、風吹が抱える葛藤の重みがよりリアルに伝わってきたのだと思います。
この映画は、「普通」とは人の数だけ形があり、他人の“普通”が自分と違っても、それを認め、受け入れながら前に進むことの大切さを教えてくれる作品でした。そしてそのテーマを、繊細な感情の機微で支えた高井千帆さんの演技は、間違いなくこの作品の大きな魅力の一つだったと思います。
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