配信開始日 2025年7月31日

「主張先行型」偽りなき日々 蛇足軒妖瀬布さんの映画レビュー(感想・評価)

2.5 主張先行型

2025年8月2日
iPhoneアプリから投稿

冒頭の〈誰でもない、何でもない〉
主旨はおもしろいシークエンスなのに、
観客に明快に伝わっているだろうか。

他にも興味をそそられるシークエンスを幾つも提示するものの、
それらが観客に明快に伝わっているだろうか。

個々のカットで具体的に何を伝えたいのかが曖昧で、
焦点が絞り切れていない印象を受ける。

こういう作品に多いのは登場人物の背景を説明する小道具(聴いている音楽、本棚の書籍、壁の絵など)が、
物語と乖離し、単なる記号として浮いてしまっているケースだ。

シナリオに有機的に馴染んでおらず、
作り手の主張と物語の筋が噛み合っていないのだ。

当然、観客は登場人物の内面に深く共感することが難しくなる。

本作が目指しているのは、
現実の不条理とか、
論理よりも感情とか、
机の上で勉強するより、
書を捨てて街に出て感じることの重要さ、
なのかもしれない。

しかし、
その意図を達成するには、
観客の感情に訴えかけるための具体的な主人公の描写が不可欠だ。

ただ小道具を提示するだけでなく、
イギー・ポップやジャニス・ジョップリンに頼ることなく、

登場人物の感情や行動にどのように影響を与えているのかを、
雰囲気ばかりではなく明確な映像表現で感じ取りたい。

「二十歳の原点」を見直してみる。

蛇足軒妖瀬布