原爆スパイのレビュー・感想・評価
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オッペンの事実補完。
オッペンハイマーを観た人にはピンとくる、アメリカにも力に依る抑止に疑問を持つ人が居たという事実をインタビューと再現映像で丁寧に追っていく。
オッピーの部下であった当の本人、ご夫妻がどんな動機でこの事実を公にしたのかは良くわからなかったが残りの時間、世の中の流れって事なのかな、原爆肯定派のアメリカでこれを開示するのは勇気がいる事であろう、事実別な御夫妻は死刑になっているし。
自分も客観的にこの行為をどう判断するかはかなり迷ったよ、明らかな情報漏洩だしね。
しかし科学者として、人間として、地球規模の平和を願うと彼らの判断が崇高な物にも思える。
当時日本はすでに降伏の形を模索、打診していたにも関わらず最新兵器の実験と、共産主義ソビエト牽制のためトルーマンにより実行された件はアメリカ側からの話は重い。明らかな大量虐殺、、まあそんなもんだよ戦争は、、にんげんだもの。
軍部の判断が「必要無し」だったと改めて知ったのも感慨深い。
当時のアメリカという国の運営として戦後とさらに先を見通して、核兵器使用は間違ってなかったとも思うが民間人を大量に犠牲にするやり方はやはり野蛮すぎるパフォーマンスである。
核兵器開発に係わる情報をソ連に流した男
世界の将来を考える倫理観
第2次世界大戦中の原爆開発•マンハッタン計画に最年少の18歳で採用され、オッペンハイマー博士の下で原子爆弾の研究・開発に携わった天才物理学者セオドア・アルビン・ホールは、アメリカによる原爆の独占を危険視し、開発に関わる国家機密情報をソ連へと流した。ひとりの物理学者の倫理観と大胆な行動が世界をどのように変えたのか。同様のスパイ容疑でローゼンバーグ夫妻が死刑判決を受けた一方で、なぜ彼は裁かれなかったのか。そして彼の妻と娘たちはどのように秘密を共有し、共に生きたのか。丹念な取材と再現映像を交えながら、原爆投下に疑義を唱えたホールとその家族の物語と、核開発をめぐる大国の思惑を描いた作品。
アメリカにもこんな倫理観を持った人が居たのだとなんかホッとした。
もし彼が居なくて、アメリカだけが核兵器を持っていたら、力のバランスは保てず、どこの国もアメリカの言いなりになっていただろう事は容易に想像できる。
しかし、ソ連に機密情報を渡したため、冷戦および核拡散が起きたこともまた事実だと思う。
そして、プーチンの様な旧ソ連の復活を考えてる様な指導者には、核で他国を脅すと言う暴挙に出ている現実も有る。
良い事、悪い事、両方有るな、という感想。
しかし、アメリカ人であるとともに、地球人であるという倫理観を持った人が居た事に驚き、そしてその事を知れた本作にかんしゃです。
本作も、重いけどなるべく多くの人に観てもらいたい良作だと思う。
普通の人の普通じゃない記録
行きつけのミニシアターの戦後80年特集で鑑賞
歴史での評価は立場により大きく分かれるであろう行動をした当事者、その妻と娘へのインタビューが中心
ノーランのオッペンハイマーのようなドラマチックな展開はなく、淡々と普通の家族の思い出話が展開、教訓めいた話もないのは意外だった
20歳前の大学在学中に核開発メンバーの一員となるだけでも全然普通じゃないのだけど、その姿は想像できずとても普通の高齢者たちの話を2時間たっぷりと聞かされ、正直かなり眠かった。
普通の人が国家のパワーバランスを全く考慮せず、個人の思いのみで現在にまで至る核拡散世界のきっかけを作った、というギャップを感じさせるのは成功しているのかもしれない。
え、意外に核開発情報の漏洩に対する監視の目は粗かったんだ、と今になって驚かされる一作
1945年の核開発成功によって、米国は世界で唯一核兵器を保有・使用した国となり、その数年後にはソビエト連邦も核兵器を開発、冷戦期を迎えた世界は長らく核戦争の恐怖に怯えることになります。
ソビエト連邦がかくも迅速に核兵器を開発することができた背景には、米国内におけるスパイ活動や情報漏洩があるとされ、実際本作でも取り上げている「ローゼンバーグ事件」が起きています。
本作が取り上げるセオドア・ホールも、マンハッタン計画に参加した最年少の物理学者であることに加え、ソビエト連邦側に情報を漏洩した当事者の一人です。彼は1999年に死去していますが、その前にインタビューに応じて、自らの意思で核開発に関連する情報をソビエト連邦に流したことを認めました。
なぜ彼は国家機密情報を漏洩させたのか、どんな人生を送ってきたのか。本作は彼の妻、ジョーンの視点で彼の半生を語っていきます。基本的にはホール夫妻の視点で語っていくので、彼がどのような情報を漏洩して、いかなる形でソビエト連邦側の核開発に貢献したのか、そして死刑判決を受けたローゼンバーグ夫妻と異なって、なぜ彼らはその後も自由に生活できたのか、といった核開発におけるスパイ活動の全容を詳らかにしている、という内容とはなっていません。だからこそ、本作の背景や関連する事件などを調べたくなる作品ともなっています。
冷戦期のスパイ活動については、フレデリック・フォーサイスやジョン・ル・カレを始めとした作家・作品が様々な角度で描いているので、本作を観た後で参考資料としてそれらの作品に当たってみるのがおすすめです。
映画界におけるレッド・パージの状況を見聞きすると、当時の米国ではスパイの嫌疑をかけられた人は片っ端から逮捕・追放されていたような印象を受けていたのですが、国家最高機密にあたる情報を漏洩したことに対して、当局側が割と粗い捜査をしていなかったことが、ちょっと意外!
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