「予告編がピークになってしまった映画」ロマンティック・キラー こひくきさんの映画レビュー(感想・評価)
予告編がピークになってしまった映画
予告編に惹かれて劇場へ足を運んだが、観終わって最初に思ったのは「予告編が前半のダイジェストだった」という事実だった。盛り上がりも、期待していたバカバカしさも、最後まで予告編を超えることはない。前半は正直、何度席を立ってスクリーンを後にしようか迷った。冒頭は確かにうるさくてバカで、完全な持久戦だ。しかし、その持久に見合うだけの“突き抜けたくだらなさ”は、結局提示されなかった。
理由は明確で、この作品があまりにも安全に作られているからだ。誰にも嫌われないことを優先し、ターゲットを絞り切らなかった結果、ギャグはすべて商品として最適化され、振り切る勇気も壊れる覚悟も感じられない。滑ることや破綻することを恐れ、常にブレーキがかかっているため、バカ映画として最も重要な「取り返しのつかなさ」が欠けている。
後半に入るとテーマは見えてきて、「恋愛の強制」や「選択の自由」といったメッセージが浮かび上がる。そこで評価を持ち直す人が多いのも理解できる。ただ、それは前半の不親切さを帳消しにするものではない。耐えた先にある報酬としては弱く、構成としても観客に優しいとは言い難い。
失敗作ではないし、意味のない映画でもない。しかし、バカ映画として突き抜ける覚悟も、強烈な一撃を残す意志もなかった。その結果、「予告編が一番楽しい映画」という評価が成立してしまう。この映画の評価の割れ方自体が、その構造を物語っている。
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