「 前半は一連の「揺さぶられっ子症候群(SBS)」裁判、後半は養父...」揺さぶられる正義 sugsyuさんの映画レビュー(感想・評価)
前半は一連の「揺さぶられっ子症候群(SBS)」裁判、後半は養父...
前半は一連の「揺さぶられっ子症候群(SBS)」裁判、後半は養父による児童虐待死裁判を追う。衝撃的なのは前者で弁護士側についていた脳外科医が、後半では検察側の証人となっていることだ。事故(あるいは病死)か虐待か、専門家であっても、家庭という密室で起こる事件立証の困難さ。「10人の真犯人を逃しても1人の冤罪をつくってはいけない」という原則は、児童虐待死という悲惨の前にはどこまで固持できるのか。本作では、冤罪によって引き裂かれた家族の苦悩も描き、それを見ればまた天秤は逆方向に揺れる。科学的証拠(とされるもの)に頼り過ぎることの危険性も感じさせられる。素人目には、むしろ健全な「常識」(2子以上をそれまで平常に育ててきた家庭で、なんの前触れもなく凄惨な虐待死が起こるものだろうか?など)にもっと依拠することができないものか、とさえ思える。後半の虐待死事件についても、個人的にも記憶している事件でもあり(報道から受ける印象は完全にクロだった)、「科学的証拠」をチェリーピッキングするような検察のやり口に衝撃を覚えた。大きく観れば、日本の司法が昔ほど硬直的ではなく、批判を受ければきちんとアップデートされていく、という改善の記録ではあるのだが…その過程で苦しんだ人たち、戦った人たちのことを忘れるべきではない。
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