「映画の中に入りたい…」テレビの中に入りたい おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
映画の中に入りたい…
■ 作品情報
監督 ジェーン・シェーンブルン。主要キャストは、ジャスティス・スミス、ジャック・ヘヴン、ヘレナ・ハワード、リンジー・ジョーダン、フレッド・ダースト、ダニエル・デッドワイラー。脚本 ジェーン・シェーンブルン。製作国 アメリカ。プロデューサー エマ・ストーン、デイブ・マッカリーほか。A24製作作品。
■ ストーリー
1990年代のアメリカ郊外。冴えない日々を送るティーンエイジャーのオーウェンは、毎週土曜深夜に放送される謎のテレビ番組「ピンク・オペーク」にのめり込んでいた。「ピンク・オペーク」は、イザベルとタラという二人の少女が「ミスター・憂鬱(メランコリー)」の送る怪物と戦うヒーローものだという。同じ番組の熱心な視聴者であるマディと出会った彼は、二人で番組の登場人物たちに自分を重ね合わせ、生きづらい現実を忘れられる唯一の場所としていた。しかし、ある日突然マディはオーウェンの前から姿を消す。一人残されたオーウェンは、自らのアイデンティティや真実を知ることへの葛藤を抱えながら、漠然とした不安の中で時を過ごすことになる。
■ 感想
全体としては、まるで90年代のアンダーグラウンドな空気感に吸い込まれていくような感覚に陥ります。少年オーウェンと少女マディが、架空の深夜番組「ピンク・オペーク」に自分たちの居場所を見出す姿は、多くの人が経験するであろう「自分探し」の切実さを象徴しているように感じられます。
しかし、正直なところ、物語の核心や登場人物たちの内面に深く共感するまでには至りませんでした。思春期の漠然とした不安、理想と現実のギャップ、そして性自認といったテーマはなんとなく感じます。そんな思いが絡み合って、マディは現実からの逃避を選んだのでしょうか。
一方で、マディについて行かなかったオーウェンは、マディほどの強い不安や不満を感じていなかったということでしょうか。それとも彼女のように一歩踏みだす勇気が持てなかったということでしょうか。そして、大人になった今、当時を振り返りつつ、選ばなかった方の選択肢を思い描いたり、選ばなかった後悔に苛まれたりしているということでしょうか。
まさに「ピンク・オペーク」が特定の視聴者に深く刺さったように、この映画もまた、観る人を選ぶ作品なのかもしれません。深く没入し、自らの体験と重ね合わせることで、唯一無二の感情を呼び起こされる人もいるでしょう。ただ、残念ながら自分にはそこまで刺さることはなく、むしろもう少し「映画の中に入りたい…」と感じるような作品でした。なんとも理解し難い作品です。
