「サンキュー・ベリー・マッチ」テイクアウト talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
サンキュー・ベリー・マッチ
チップを貰ったら「サンキュー・ベリー・マッチ!」と笑顔で言うんだよ!と仲間に言われ、笑顔の練習も無理やりやらせられても、ミンは出前先で、ありがとうも言わず笑顔も見せない。心理的にも身体的にもそんなことができる状態じゃない。中国にいる妻にいまだ仕送りもできず、高利子・闇金の借金取りに追われている。サンキュー・ベリー・マッチ仲間は優しくて、こんな雨の晩はチップをたくさん貰えるよと、自分は出前にまわらずミンに出前をやらせる。それなのに最後の最後でエレベーターの中でチンピラに脅され金を盗られてしまうミン。
チャイナタウンの中華料理店でテキパキと客の注文をとり、会計をこなし、デリバリー注文の電話を受け、食材の注文もするママは八面六臂の働きぶりで頼もしい。必要な英語は十分にできるので、客との会話も楽しんでいるし、ダメなものはダメと言う。店を閉めてからかかってきた電話注文を引き受けたのは優しいと思ったが、それがミンの絶望につながってしまう。でも、料理担当の仲間がミンに訳も聞かず、自分もそういうことがあったよとお金を貸してくれる。返すのはゆっくりでいいよと言って。
ベイカー監督は、移民を「移民」と一括りにせず、個人として映している。夢も愛も友情もある人達が、偏見と差別にさらされ、お金がないことで辛い思いをする。胸がチクッと痛みながらあたたかい気持ちにもなる。これがANORAに繋がって行くんだな。
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