劇場公開日 2025年10月31日

Pacific Mother パシフィック・マザーのレビュー・感想・評価

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5.0んんん♪ 女たちのグラン・ブルー

2025年11月2日
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鑑賞方法:映画館

「海」という字には「母」が入っているんだよねぇ・・。
美しい海を愛し、海に生きる女たちの友情と出産の物語でした。

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ハワイ、ニュージーランド、タヒチ、クック諸島、そして沖縄。
案内人の福本幸子さんを含めての四人の懐妊と出産。そしてそれをバックアップした素敵な助産婦さんたちのドキュメントでしたね。

どのシーンもとっても幻想的でした。だって出演カップルはダイバーと水中写真家とカヌーの漕ぎ手たちなんですもの!

つまらない教育映画ではありませんから心配ご無用。この製作スタッフの顔ぶれをご確認ください。ディズニーなんです。
だから最もファッショナブルに、そして最も現代的に、我々の最も古い行動だった「お産」をショーアップするんです。

「今度は山で産んでみたいな」と笑い、森の泉で、夢を叶えて清水の流れに身を浸して産む二人目。

環太平洋の女たちが、リモート画面でお互いの選択とチャレンジを共有です。
「自分で自分のお産を決める」のです。

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僕は三人の子の父親で、三人ともその出産には立ち会いました。
三箇所で、助産院と、そして小さな産院での出産。助産婦さんたちの名前も顔も、声も、言葉もぜんぶ覚えています。
明かりと産湯のきらめき。産声と皆の笑い声。おっちょこちょいのドクターのセリフも覚えている。
三十年も前のことがこんなにも鮮明によみがえる。

ちょっぴり涙が。

映画の中でも「友人には反対されたんだよ」と笑った彼氏が出てましたね、つまり ―
「立会い出産」をするとあの剣幕や、慣れない出血を見て卒倒したり、EDになるお父さんもいるらしいが、僕はそこ、ぜんぜん平気でね、

なぜなら、魚から鳥から爬虫類まで、ずいぶん昔からたくさんの動物を飼っていたし、生き物の誕生と、生と死については研究熱心で、小学生の頃からペットたちの繁殖にはしっかり付き合っていましたから。

うちのネコはお産が本当に下手糞だった。引っ張り出して心マをしてやらなければならなかったし、
同じく庭で飼っていたポニーも、ちょっと難産で、結局仔馬は助からなかったけれど、脚を引っ張って娩出させて、しばらく鼻孔に口移し人工呼吸を試みた。仔馬は ひと息だけ大きくため息をついて死んだ。母馬は仔の匂いと胎盤の匂いで何日も何日も悲しんだ。

僕はそうやってたくさんの生き物・ペットの繁殖や出産には触れてきたから「新しい生命の登場」や「新参者を迎える面白さ」を幾度も味わってきたわけで。
だから僕の新しい関係者=小さい人間の出現にも!ホントに興味が津々だったわけです。

「胎盤」。「へその緒」。ポリネシア語の魔法が命と大地を繋ぎます。

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僕の名前も父が考えてくれました、「早朝の沐浴」を見ながらその光景から決めてくれた名前でした。

胎児のように泳ぐ女たち。
溢れる羊水、海、小川、産湯。そして涙。

彼ら、あんなに涙を流して喜んでいたではありませんか。「海」と「風」が。そして「命」と「詩」が一体化した素晴らしい名前を付けてもらった、あの南の島の赤ん坊たちよ、
そして我が家の子どもたちよ、

君たちに幸多かれと祈るよ。

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東座はいま「女ものの作品」が目白押しです。いい傾向だと思う。
あれこれ手広く品揃えするのもいいけれど、館主合木こずえさんの個人的意向で「狭く絞ったラインナップだけでプログラムを組むこの一ヶ月」。一点に集中することで、きっとこの映画館の働きは普遍のものへと昇華していくはずだから。

ありがとうございました。今夜はお母さまがとろけるような優しい笑顔で僕を見送ってくださいましたよ。
「あらまあ、男の方もこの映画 観に来られたのね」と思われたかな(笑)

こんど「『こずえさん』の名付けの由来」をお尋ねしてみたいなぁ。小さなお母さまからどうしてこんなに大きな、素敵な娘さんが生まれたんでしょう。訊いてみたいです。

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きりん