「そんな暗号どうでもいい!」ワン・バトル・アフター・アナザー てんぞーさんの映画レビュー(感想・評価)
そんな暗号どうでもいい!
面白いけど変な映画。どういう話だったかと言われると答えに窮する。
基本的には、娘を狙われてドタバタするディカプリオを楽しむ映画で、シリアスな展開もあるけど全体的にはブラックコメディ寄りの話だと思う。
今作のディカプリオは極左組織のレジェンドで爆弾魔のボブという配役。家庭を持って子供が出来たことで常人に戻るが、妻とは左翼運動の革命性の違いで離ればなれに。両親はそんな感じだが、娘のウィラは成績も良くニンジャ道場で空手を嗜むなど立派に育っていて凄い。…ニンジャ道場?
ウィラは学校でもいい子ですよ、と先生に言われて思わず涙ぐむディカプリオが可愛い。作中での描写はけっこうダメ人間寄りではあるが、子供に対しては常に真剣なディカプリオ。思想はともかく立派ではある。
作中のボブは穴倉を必死で逃げたり屋根を走り回ったりビルから落ちたり車から飛び降りたりしていてずっと大変そう。だいたい過去の行いのせいではあるが、追いかけてくるショーン・ペンがド変態の極右レイシストなので自業自得よりも可哀そうという気持ちの方が勝つ。
途中、あまりにも自然な流れでビルから落ちてテーザー銃にやられるボブ。昔のジャッキーみたいな落ち方に呆気にとられる。本人が体を張ったのかスタントなのか合成なのかは分からないが、落ちるディカプリオが面白すぎて卑怯だ。
地下組織の電話には「もう暗号とか覚えてねぇんだ!いい加減にしろ!」とマジ切れするし、やっぱり大枠はコメディ映画で合っていると思う。最高に面白い。
色々あって娘と再会するボブ。
己の出自を突き付けられ、この世に極左vs極右の戦争が本当に存在すると知ったウィラはボブに教え込まれた暗号を叫びながら「アンタは誰なんだ!」と叫ぶ。そんな暗号なんてどうでもいい、と娘を抱きしめるボブ。転換した価値観の対比が素晴らしい。
何だかんだ日常に戻った二人。
反政府デモへの参加に積極的になったウィラを、慣れないスマホと格闘しつつ「ほどほどに」と見送るボブ。どちらも異なる方向に目が開いた事が明示されているが、互いの心の距離はむしろ近づいた印象。傍には居ない母からの手紙にある「パパにキスして」で親子の距離が修復されるラストは、本当の家族をウィラが自らの手で取り戻したことを表す良いシーン。左右両極端な仁義なき戦いを描いたくせしてアットホームな着地がとても心地よい。
左右組織の攻防は面白いが、主人公自身が何かを成し遂げる物語ではないので、ディカプリオ大活躍!という内容ではない所だけは注意が必要。でも走って落ちて転がって怒るディカプリオでしか得られないものがあると改めて気付かせてくれる映画だった。
・火葬設備直結型高級オフィスビル
・どっちの組織も隠し扉から地下に潜る所が好き。似た者同士やんけ
・元極左テロリストで陰謀論者の親父が居る家にガールフレンドを迎えに行くの嫌すぎる
・ニンジャ道場のカルロス先生(ベニチオ)が頼りになりすぎる
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