「変革と普遍」ワン・バトル・アフター・アナザー U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
変革と普遍
さて、この作品のテーマはどれなんだろうと考える。
冒頭、移民の解放全線みたいな事が描かれる。おお、また社会派な作風なのだなぁなんて思う。
しばらくは革命ないしは、テロと呼ばれるような描写が続く。世界は不満と不平に満ちていて、その世界を変革しようとする者達の存在。
そんな混沌とした中でも、生命は誕生する。
本作のキーとなる娘だ。
ただ、望まれて生まれたかどうかは疑問な状況。
実際、母親は臨月のような腹を抱えて銃を乱射してたりするし飲酒もしてて、結局は家庭を捨てて革命に身を投じる。
父親は爆弾とかを作れる人だけど、子供をきっかけに平穏を望むようになる。守るべき存在が出来てしまったので、この生命を育む為にもだろうし、世界を変革するよりも崇高な使命に気づいたからかもしれない。
で、この父親がディカプリオ。
それから16年後。
普通の生活を送ってた親子だったけど、血生臭い戦線の兵隊達は彼らを逃してくれなかったって話。
娘の出生には秘密があって、彼女の出自次第で都合が悪くなる人間もいて…いまの時代にこれかと思うのだけど、白人至上主義者の団体のようなものも描かれていてビビる。とは言え、根強く残る差別も大国にはあるのだろうなぁなんて事も推察できる。
で、まあ、その団体に入団するのが最高のステータスみたいに思ってる人間が、この娘の実の父親だったりする。
それがショーン・ペン
圧巻の役作りで、役所ではあった。
彼だけ見てると、いやディカプリオもそうなんだけど、時折コレはコメディなのかと思えてしまう。
くそマジメにやってはいるんだけれど、バカげているというか、バカにしているというか。
で、ショーン的にはこの娘が汚点なわけだ。
母親も法取引で組織を売り、所属していた団体は壊滅してたりするから、革命側から見てもこの娘は忌み児のようなもの。
彼女が謳歌する平穏は実は針の筵の上にある状態。
敵対する巨大な組織のどちらにも助けてもらえない状態の中で大人の都合に巻き込まれてく。
そんな中、1人奮闘する父親。
そんな背景にも関わらず物語は全く重くならない。
垂れ流されるBGMのせいかもしれないし、意表を突くシュチュや台詞のせいかもしれない。
とにかく多様なものが挿入される。
体制側の特権意識とか、革命側の非人道さだったり、人種差別とか横暴な人の性とか、性癖が壊す壁だったり、階級がある社会とか…なんかホントに小難しい事がいっぱい入ってる。
それらを全部薙ぎ倒して貫くのが子供への愛情だったりもして…母親の手紙もそうだけど。
まぁ、そういうまとめかとも思うのだけど、救い出した娘は結局、革命に乗り出したりもしてて、血縁を凌駕した愛を提示しながらも、継承されるDNAを描いてみたりと。
変革を必要とする世界の中で、変革を受け付けない愛情の存在みたいな…。
けどまぁ、とっちらかってかと言われればそうでもなく、技ありなストリーテリングでもあったなぁと。
ただ、眠くもなったよね。
BGMが合わないせいもあったし、意味不明な肉付けのせいもあったように思う。
役者陣の没入度はディカプリオを筆頭に流石のものだった。とは言えサプライズ的なものは薄く…そこはショーン・ペンが魅せきってくれたなぁ。
「戦闘につぐ戦闘」ってタイトルではあるけれど、どんな人生であっても大なり小なりそういう側面は引きずるよなぁとも思う。
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