「ドジっ子父さん奮闘記」ワン・バトル・アフター・アナザー toshijpさんの映画レビュー(感想・評価)
ドジっ子父さん奮闘記
予告編でやたら「革命」という言葉が出てきたり「第3次世界大戦だ!」
という台詞があったりして、壮大な革命映画なのか?と思ったら
違っていた。映画の方向性は違ったけれど思いの他面白かった。
一応移民問題や人種差別、白人至上主義などを扱ってはいるが最後まで
観てもそれらの問題は一ミリも解決していない。革命が成功するわけでも、
また組織が壊滅するわけでもない。
物語の背景や登場人物の属性が良く分からなくてもアクション映画として
だけでも十分に楽しめる。相次ぐ戦闘(映画の題がこれ)と追跡が見どころ。
物語は見せ場を面白くさせるためのお膳立てと思っても良い。でも不思議と
取って付けた感じがしない。それは登場人物たちの行動がその人の成り立ちや
性格、属性に照らして矛盾がないからだろう。
ちょっとイカれた登場人物や団体がたくさん登場する。
その中でも一番個性的だったのは軍人ロックジョー(ショーン・ペン)。
革命家のペルフィディア(テヤナ・テイラー)に銃を突き付けられ、
「立て!足じゃなくてアレを勃てろ!」と言われる。この状況で”勃つんだ、
ロックジョー!”とは理不尽な要求。しかし”勃てと言われて素直に勃った”
ところが変態。どうも黒人女性に欲情するらしく、その後の展開からして
この時もまんざらではなかったようだ。
ペルフィディア自身も革命家にしてヤリマンで、どっちもどっちだ。子供を
産んでも子育てには無関心だし。
でもこんな変態やヤリマンが物語を先の読めない展開に導く。
組織では白人至上主義の秘密結社があったり、娘を匿う修道院が麻薬を
製造していたりと何でもありなところが面白い。
主人公のボブ(レオナルド・ディカプリオ)は元偉大な革命家で、今は娘と
一緒に身を潜めている。しかしダメおやじで、最前線に立たなくなってからは
酒とドラッグに溺れて、娘からは厭わしい存在と見られている。
ある日娘ウィラ(チェイス・インフィニティ)に身の危険が迫っていることを
知って、革命家時代の闘争心を次第によみがえらせていく。
緊迫感のある展開ながらボブがちょっと間抜けでドジなところがあって
コミカルだ。革命組織に電話して合言葉を言わなければならない時に、
長いこと使っていないから忘れてしまっているとか、屋根伝いに逃げる時に
跳躍が足りなくて落下、捕らえられてしまうとか。
彼に力を貸してくれるセンセイ(ベニチオ・デル・トロ)がとぼけた雰囲気を
出していて良い。
終盤はロックジョー・ウィラ・ボブに秘密結社からの刺客も加わっての
追跡と戦い。画面に引き込まれた。最終的に娘は無事でめでたしめでたし。
ただ、ウィラが助かったのはボブの力によってではなくて協力者がいたおかげ
だったりウィラ自身に革命家の血が流れていて自ら行動したおかげでもあった。
考察が好きならばアメリカが抱える問題について考えるもよし。自分は
あまり考えない方なので単純にエンタメとして観たが大満足だった。
PTA(ポール・トーマス・アンダーソン)の過去作を何本か鑑賞したことは
あったが、割と地味な、評論家受けはするけれど大衆向けではないという
印象だった。だからこんなにエンタメ寄りの映画が撮れるとは思っていなくて
意外だったけれど今後は注目しようと思う。
IMAXで鑑賞して良かった。上映規模が縮小されないうちにまた観たい。
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余談
映画や俳優の名前が出てくる小ネタがいくつかあった。
お腹に赤ちゃんがいるペルフィディアが訓練で機関銃をぶっ放して
「トニー・モンタナになった気分!」→スカーフェイス(1983年製作)
原題:Scarface でアル・パチーノが演じた、暗黒社会で成り上がっていく
主人公の名前がトニー・モンタナ。激しい銃撃戦が見られる映画だった。
センセイが道場で教えていたのは空手?看板か何かに「NINJA」という
文字があったような気がした。ヌンチャクが置いてあったみたいだし
訳が分からない。スーパーマン(1978年製作)のポスター(カタカナで
大きくスーパーマンと書いてある日本版)が貼ってあった。
「自由とは恐れないこと。トム・クルーズみたいに。」と言われて、走る車から
必死のダイブをする(というか振り落とされる)ボブ。ディカプリオ本人が
トム・クルーズみたいに自分でやったのかスタントマンなのかは不明。
何となくスタントマンのような気がする。
共感ありがとうございます。
おっしゃる通り、みんなキャラが立っていて、メインのショーン・ペン、ディカプリオ、デルトロは違う方向に突き抜けてて面白かったですね。
ちなみにディカプリオのスタントですが、ワーナーブラザースジャパン公式Xでは次のように紹介されてました。
「運転、フェンス越え、車からの飛び降り、建物の屋上からのジャンプなどほぼすべてのスタントを自らこなしたレオナルド・ディカプリオ。屋上からのジャンプスタントはスタントコーディネーターの監修のもと、約1週間かけてリハーサルを行ったそう。」
「ほぼ」がちょっと気になりますが、ディカプリオが頑張ってくれた、のかもしれません。
長文失礼しました。
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