「【こんな映画作って喜んでるようじゃ、もうハリウッドも民主党もだめかもわからんね】」ワン・バトル・アフター・アナザー jin-inuさんの映画レビュー(感想・評価)
【こんな映画作って喜んでるようじゃ、もうハリウッドも民主党もだめかもわからんね】
極左革命グループ「フレンチ75」は政府転覆を目論み、移民収容所襲撃、爆弾テロ、銀行強盗、電力網爆破などの破壊工作に勤しんでいます。いかにもハリウッドらしい派手な爆破シーンや銃をぶっぱなすシーンはてんこ盛りですが、彼らの思想は語られず精神的支柱も見当たりません。こんな集団がもし政権を奪取したらそれこそ暗黒時代に逆戻りでしょう。このご時世に暴力革命を肯定するなんて本気でしょうか。アホらしくなってきます。中国やロシアじゃないんだから。
フレンチ75に所属する若き黒人女性パーフィディア・ビバリーヒルズ(テヤナ・テイラー)さんはイケイケの革命闘士です。彼女のカリスマ性の前に、二人の白人男性がメロメロに。
一人はホワイト・トラッシュ代表ボブ・ファーガソン(レオナルド・ディカプリオ)さん。もう一人は軍人代表スティーブン・J・ロックジョー大佐(ショーン・ペン)。
前半のボブはただただパーフィディアさんに付き従い、彼女に捨てられてからは酒とドラッグに溺れ、娘がさらわれてからはその救出に生命をかける男です。自分の人生は空っぽな男で、まさにホワイト・トラッシュ。でも彼がなぜそこまでパーフィディアさんに惹かれるのかよく分かりません。
ロックジョー大佐もパーフィディアさんに一目惚れして付きまとい、ホテルに呼び出します。「来なければ活動できなくしてやるぞ!」ってなんだそれ。でもパーフィディアさんはノコノコ出かけていってノリノリで逆レイプごっこ。彼らの性癖はよく分かりません。
パーフィディアさんはなにしろ暴力とセックスに目がない女性です。全ては衝動であり、別に深い思想的背景があるようには見えません。こんな彼女のことを二人の白人男性は“英雄”として崇めます。パーフィディアさんは女の子を産みますが、彼女も父親がどっちなのか分かりません。そんなこんなでこの“英雄”は革命の大義のためにあっさりと家族を捨て、自分が捕まったらあっさりと組織を売ります。本作の“英雄”の斬新な点は若い黒人女性であることと自己犠牲なんてしないこと。新たな“英雄”像を提示して見せてくれました。
本作の斬新な点はそこだけ。英雄を黒人女性にしてそれに従うのが白人男性達と立場を入れ替えただけです。もしそうしなければただの暴力男の革命夢物語でしかなく、女性や黒人の観客はそっぽを向くでしょう。いろんな計算が働いています。
フレンチ75に対抗するのが白人至上主義の秘密結社「クリスマス・アドベンチャラーズ・クラブ」。陰謀論によく出てきそうな陳腐な組織です。ロックジョー大佐も入会を許可されます。でも黒人女性と関係を持っていたことがバレ、粛清されます。エリート白人メンバーであるティム・スミス(ジョン・フーゲナッカー)さんが直々に殺しに出かけます。エリート白人が自分の手を汚すはずないじゃん!アホくさ。
一方ロックジョー大佐は自分の手を汚しません。先住民の賞金稼ぎ・アヴァンティQ(エリック・シュヴァイク)さんを雇い、娘の居場所を突き止め、軍隊を動かし街を襲います。女子高生一人を誘拐するのに軍を動かすなんて!アホくさ。
で、やっと娘と二人きりになったロックジョー大佐はすかさずDNA検査を敢行!やっぱ俺の娘じゃん!ということで、あー、この親父、娘を守るために軍を裏切って戦うのかな―、と思って見てたら、アヴァンティQさんに娘の処分を頼みます。パーフィディアさんは崇めてたのに娘はあっさり処分。ロックジョー大佐の行動原理が分かりません。アヴァンティQさんもアヴァンティQさんでなぜか娘を逃がすために命を捨てます。なにがしたいのか分かりません!
娘とそれを追うエリート白人ティムさんとさらにそれを追うホワイト・トラッシュのボブさんの3台のカーチェースが最後の見せ場になりますが、この3台が揃うのも「たまたまそこに」でしかありません。陳腐すぎ!他にも「革命尼僧の修道院」とか、「秘密の脱出経路が張り巡らされた街」とか陳腐設定のてんこ盛り!
娘のテコンドーの先生でありボブの逃走を手助けするセルジオ・セント・カルロス(ベニチオ・デル・トロ)さんは黒人とヒスパニックの共闘を象徴する重要キャラです。でもなんで彼が協力的なのかもよく分かりません。結局自分だけ警察に捕まっちゃうし。
娘は普通の女子高生のはずですが銃の撃ち方知ってます。さすがアメリカ!銃社会!この娘が母の意思をついで次の革命闘士になっていくような、それを賛美するような、嫌なエンディングでした。
「娯楽映画」としてこれまで暴力を賛美し続けてきたハリウッド。本作ではついに暴力革命を賛美しているようにうつります。それでいいのか?アメリカ人。たしかに白人人口は減少しており、白人支配の終焉はおそらく避けられないでしょう。本作はその後の混乱を示唆するような映画でした。
極左の暴力革命の女性闘士に振り回されるダメ男を演じたディカプリオ。本作のコメディパートを一身に背負って熱演していますが、なにしろ演出が冗長なので、笑いよりも退屈を産んでしまいます。革命を支援する役を演じた彼のギャラが2000万ドルというのが最高のブラックユーモアでした。革命を描いた映画で大儲けするというビジネスモデル、新たな搾取構造、斬新です。
本作は果たしてアメリカ社会の分断と暴力を解消するのか、助長するのか。もちろん助長します。こんな娯楽映画作って喜んでるようじゃ、もうハリウッドも民主党もだめかもわからんね。
この映画を観て、極左革命組織へのシンパシーを感じるか、それとも暴力革命を怖いと思うか、どちらが多いだろうか。銀行の警備員を撃ち殺した女性“英雄”の姿に共感できるだろうか。結果的に本作は左派や白人エリート層と対峙するMAGAを利する形になったのではないだろうか。PTAはMAGAなのだろうか。陳腐なフィクションは現実社会をさらに歪めてしまうのではないだろうか。
ナイスコメントです。
前評判良さげなので観てみましたが退屈のひと言。なんでこんな映画が面白いのか理解不能。映像の裏にある意図や想いを観るほうが汲み取らないといけないんですかね。そんなのは評論家に任せますわ。私はただシンプルに観て面白い映画が観たい。
劇中の人物の行動にナゾが多すぎて全く腹落ちせず。このコメントを観て、「あ、みんな分からなかったんだ」と安心しました。
他の映画観れば良かったよ…
はじめまして。
他作のレビューも拝読させていただき、独自の視点になるほどと思う部分があったので、ぜひフォローさせていただきたいと思いました。
今後もレビューを楽しみにしております。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。

 
  


 
  
  
  
  
  
  
  
  
  
 