ロスト・バスのレビュー・感想・評価
全7件を表示
【戦うスクールバス】
山火事と戦うのが“スクールバスの運転手”という、これまでにない斬新な視点で描かれるパニック映画。ブラムハウス製作と聞いて「低予算の工夫系ホラー」だと思ったら大間違い。往年のパニック映画を思わせる本格派で、2時間しっかりと見応えがある。
前半はのんびりした展開ながら、次第に山火事の恐怖が忍び寄る。実話ベースということもあり、悲劇を避けられない緊張感がじわじわと胸を締めつける。
そして何より、登場人物の“イラつくキャラ率”が異常に高い。パニック映画あるあるではあるが、マニュアルを持ち出して右往左往する姿に思わずイライラし、気づけば演出にまんまと乗せられている。
スクールバスが主役級の活躍を見せる映画といえば『SPEED』が有名だが、本作はそれを超える迫力とアクションを展開。配信限定(Apple TV+)なのが惜しいほどの良作で、自宅のテレビでも十分に迫力を味わえる。
もしPrime VideoやNetflixで配信されていたなら、もっと多くの人に知られ、話題になっていたはず。Apple TV+だけでの配信というのが、本当に惜しい。
山火事
山火事は怖い
素直に感じたままです。
森林火災のリアルなシーンもキャストや演技、カメラワークも、とてもよくできていて良作だと思います。みなさんの評価の通り。ただ、終始主人公が会社の規則と家庭の事情に翻弄されながらも、危険を冒して子どもたちを助けるという、三重苦が続く展開にストレスがすごかった。実話なので当然ですが、主人公が特殊技能を持っているわけでもなく、奇跡がおこるわけでもなく、救世主的な人物が助けにくるわけでもなく、ずっと赤い画面の中を苦悩する主人公と先生と子どもたち。消防隊や警察もまったく役に立たない。救いのない状態が全体の9割を占めます。こういう英雄譚を世間に知ってもらうのは意義のあることですが映画にする必要があったのかな?
本人が演じるリアリティー
生きてさえいればやり直せる死ぬ気でドライブ
人災によって引き起こされる今日の「災害」を描いたこのディザスター・スリラーは、多くのディザスタームービーが陥りがちな「自分(とその家族さえ)よければ全てよし」という考えに慢心することなく非常時でも他の人を気にかけながら、自分の人生すらも見つめ直すというヒューマニズムを描いている
『ブラディ・サンデー』『ユナイテッド93』『7月22日』の名匠ポール・グリーングラスが、またもや実話を映画化した本作は、彼の卓越したストーリーテリングと、それに応えるようなマシュー・マコノヒー✕アメリカ・フェレーラの熱演によって支え高められている。
パラダイスは辺り一面、地獄絵図に。今年観た映画の中で一番目の前が真っ暗に、息苦しさを感じた映画かもしれない…。『ロスト・バス』というタイトルから『オンリー・ザ・ブレイブ』のような最悪の結末が待っているのかと予想して、観るのに少し躊躇したが、その結末はぜひ自分の目で確認してほしい。原因は、"これくらい"が罷り通るPG&E社による人災、大企業と自分勝手な人々のエゴと振る舞い(ex. 公害からポイ捨てまで他人事じゃない)。人の愚かさ。
『スピード』のように正反対の男女2人が緊急事態下で同じバスに乗り、互いに似た境遇にあることを知り、そしてはなればなれになった家族の元へ帰れるか。必要にしているこんなときにも行ってやれない…。自分の家族は遠くにいてそばにいてやれなくて、外界との通信を遮断され孤立した中で目の前にある命たちを救おうとしている。けど救えたとしても一件落着でなく、自分の家族が無事か気が気じゃない。考えたら絶望的な状況すぎて、息が苦しくなって、気づいたら泣きそうになっていた。途中の手に汗握る展開は、『恐怖の報酬』ですらある。
主人公ケヴィンの決断といざとなったときの行動力も、ルールに縛られた石頭メアリーも子どもたちを引率しながら真摯に向き合う姿勢もよかった。最後の最後まで諦めてはいけない。アクセル全開死ぬ気で生きれば、手遅れになる前に人生やり直せるかも。バスに乗るときのやたら形式張った感じ(子どもたちがパニックにならないためには大事だが)と、降りるときのメアリー先生の変化。広い世界に出るのも、地元で生き直すのもどちらも正解。
急激に燃え広がる火視点の『死霊のはらわた』ショットが怖かった。ドキュメンタリータッチなハンディ撮影はもちろん、シーンの繋ぎが前後のカットで一致しているようなところも見られてよかった。あと、並行して描かれる、隊長を視点人物にした消防隊サイドのサブプロットなストーリーラインは、混乱した主人公サイドを俯瞰した状況で観客に伝えながら、"緊張と緩和"ではないけど陽が見える場面としても機能していたし、本作のテーマを語る上でも必要でしっかりと納得感があった。観終わった後には、酸素・水・太陽がほしくなる映画。
P.S. ゆえにディザスタームービー苦手な自分にもハマった。一方でそれゆえに、テーマの打ち出し方や作品クライマックスの見せ場の作り方には、些か説教臭さや作り手の作為を感じて、一部の観客を遠ざけてしまうかもしれない。だけど、自分としてはこれでいいと思えた。
キャンプファイヤー
全7件を表示




