劇場公開日 2025年12月13日

「ほぼ初対面男女の行き当たりばったりユル旅が笑いと脱力を誘う変化球のご当地映画」Good Luck 高森郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 ほぼ初対面男女の行き当たりばったりユル旅が笑いと脱力を誘う変化球のご当地映画

2025年12月16日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

笑える

楽しい

癒される

別府短編映画プロジェクトからオファーされた足立紳監督は、シナリオハンティングで訪れた豊後大野(ぶんごおおの)のユニークな名所に触発されて脚本を膨らませ、撮影現場で思いついた台詞も足して撮り、編集したら2時間近くなっていたので仕方なく1時間44分まで切り詰めたという。映画の製作過程も行き当たりばったりの旅のようで、関わった皆がリラックスして柔軟に作り進めた雰囲気が映像から伝わってくる気がする。

売れていない映画監督・太郎のさえない感じを佐野弘樹が自然に演じている。映画祭がきっかけで太郎と出会う未希(天野はな)の、いわゆる不思議ちゃん的なところもありつつ、人間関係に悩みを抱えている設定もいい。二役の板谷由夏と三役の剛力彩芽も、それぞれクセの強いキャラクターを演じ分け、ゆるめのストーリーにアクセントを効かせている。

豊後大野の宿が偶然一緒になり、太郎と未希は当地の観光スポットを自転車でめぐることになる。この流れはまあまあご当地映画らしいが、同居の彼女に養われている太郎と、何を考えているのかいまいちよくわからない未希の旅は、先々で出会う少々変わった人々とのやり取りも相まって、ほどよい笑いと脱力を誘う。サウナと水風呂で整った!というほどではないにせよ、変化球のご当地映画をゆったりと楽しんだ。

高森郁哉