劇場公開日 2025年8月1日

「緊急課題ルポルタージュ!」未来への警鐘 原発を問う まっちゃまるさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 緊急課題ルポルタージュ!

2025年8月12日
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鑑賞方法:映画館

オリバー・ストーンは本来こういうノンフィクションが得意のようだが、それでも今回は
控えめな感じがする。あまり話題になっていないし、上映館もすごく少ない。映画というよりルポルタージュという感じで、テレビで放送した方が反響あるのではないだろうか。
内容的には、データと事実の比較を通して的確に意見を述べている。とても整理されていて分かりやすいと感じた。特に、風力・ソーラーパネル発電の効率の悪さ、広大な面積の必要性などを分かりやすく説明されていた。
電力業界関連市場向けに仕事をしているので、ここで語られている内容や意見は正直個人的には新しくは無い。ただ、はっきり言っていた「人間が感じる怖いと思うものへの拒否反応」についてとても納得がいく。私個人も、最も効率良く環境も壊さず大量の電力供給が可能なのは原発だけ、という理論に納得はできるけど、やはり使用済み核燃料処理とアクシデントによる放射能漏れ、この2点について核心が持てない、漫然とした「恐怖」のようなものを感じてしまうので、原発は難しいのでは…と考えて来た。
適切な設計施工と、適切な対策により、この2点は対処出来る、理論上はそうなのだろう。原発に起因する事故による死者数は、他の化石燃料発電に起因する事故、健康被害による死者より断然数が少ないという点を重視して判断を下せるかどうかなのだろうなと明確に認識した。

日本人には今でも胸が痛む津波のシーン、福島第一原発の水蒸気爆発についての詳細説明もしっかり語られている。そしてこの事故が直接原因で亡くなった方はゼロ、むしろ汚染地域の住民の緊急避難時のずさんなやり方が原因で、移動中に亡くなった病人老人がいたと言う事、あくまでもこれは津波による被害が原因だという説明も、分かりやすかった。
これは日本映画「フロントライン」でも触れていたのでよく調べているな、という印象を受けた。

また原発の仕組みを分かりやすく広く説明することで理解を深め、漫然と不安を感じる事が無いようにしていく事も重要なのだろう。
しかし自分が考えたとて判断を下す立場にないので、そこは政府に真剣に検討して頂きたいところ。何しろ今、AIの出現によりとにかく世界中で電力が足りない、これからもっと足りなくなると、発電は重要課題なのだ。これからを生きる若い世代にこの課題への取り組みを任せる事になるわけだ。
議論のポイントを明確に示している本作は良い作品だったと言える。やはり、テレビで放送してくれたらいいのに、と思う作品。

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まっちゃまる