「めちゃくちゃエモい伝記映画 極私的レビュー」ミシェル・ルグラン 世界を変えた映画音楽家 nontaさんの映画レビュー(感想・評価)
めちゃくちゃエモい伝記映画 極私的レビュー
2019年に亡くなったフランスの作曲家ミシェル・ルグランの一生を追う伝記映画である。ルグランの音楽は流れた瞬間にそこにドラマが生まれる力を持っている。数々の名曲が映画やコンサートなどの情景と共にリミックスされてさまざま流れるのだから、それだけでも〝エモい〟映画なのである。
サブタイトルに「映画音楽家」とある。よくわからない肩書きだが、ルグランは一つの肩書きに収まりきらない。作曲家として3度のアカデミー賞を獲得、指揮者、ピアニスト、ジャズプレイヤー、アレンジャー、そして歌手としても活躍し、86歳で亡くなる直前まで舞台に立ち続けた。
映画のクライマックスで描かれる晩年のコンサートは圧巻だった。体調の限界で一部控えていた代演者に譲りつつ、最後の名曲「愛のイエントル」では自らタクトを振る。フォルテシモの頂点で指揮棒を投げ捨てた表情には、「やり切った、人生をフルに生き切った」という凄みのある達成感があった。インタビューでの「人生は流されるまま、やり切るしかないんだ」という言葉も重なり、決して順調でも計画通りでもない人生のドラマチックで完璧なエンディングだと感じた。
僕にとってルグランは「シェルブールの雨傘=I Will Wait for You」の作曲者である。小学生の頃、「マイ・ウェイ」を弾きたくて映画音楽の楽譜集を買って、そこで出会った一曲だった。以来、この旋律に取り憑かれ、この曲のカバーだけでiPhoneにプレイリストを作っている。
今回の映画で、彼が実に多才に、僕が敬愛する時代のスーパースターたちオスカー・ピーターソンやクインシー,ジョーンズなどと共演してきたことも初めて知った。
なかでも、そうなんだ!とびっくりしたのバーブラ・ストライサンドだ。小学生の頃にテレビで『おかしなおかしな大追跡』を観てファンになり、中学時代には彼女の歌を繰り返し聴き込んだ。そのストライサンドとルグランが組んだのが『愛のイエントル』だったのだそうだ。知らなかった。本作には、二人が即興で「イエントル」をデュオで歌う場面が映し出される。鳥肌が立った。
また映画の中で紹介される「シェルブールの雨傘』の映像。大好きな『ラ・ラ・ランド』そのものだった。それも当然でパンフレットでも強調されていたように、デイミアン・チャゼルは「シェルブールの雨傘』の影響下で作ったのだという。Amazonでも観られるらしいが、これはどうしても映画館で体験したい。調べてみると、なんと都内で上映していた! これは行かねばならない。
そして、もう一本。『愛のイエントル』も何としても観たい。はずかしながらの初恋の人?バーブラの監督・主演作。残念ながら今は配信や上映の機会がほとんどないが、いつか映画館でスクリーンにかかる日を心待ちにしている。
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