劇場公開日 2025年9月13日

「太鼓判のクレプスキュール作品配給」テイク・ミー・サムウェア・ナイス flushingmainstさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 太鼓判のクレプスキュール作品配給

2025年10月11日
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東欧の歴史に詳しくないので全くの想像で話を運ぶが、旧ユーゴの内乱から和平合意が'95年あたりというところから考えると、主人公のアルマは謂わば内乱第二世代といったところか。ルーツがオランダにもボスニアにもある様な微妙な心持ちが窺える。加えて今、少女なのか大人なのか、それも微妙な心持ち。鏡やガラスなどの2面を映して境界性を描く大胆な構図が、その辺りを実にうまく表現していて、映画としてのセンスは鳥肌モノ。二面性は内面だけに留まらない。
自分がボスニアに留まっていたならどうなっていたかを仮想させる従兄弟、そしてそのパシリ。はたまた好色な資産家や、旅芸人の様な歌い手など。旅の目的は父親に会う事で、詰まるところそれは自分のアイデンティティを自覚する事なんだけど、この登場人物たちがアルマに人生の多面性を知らしめて、青春を惑わせるのだなぁ。
ブレブレになっていく終盤は、惑ったままのアイデンティティ探しを表しているのか…なるほど人生やその価値など一筋縄ではないな。
クレプスキュールがまたやってくれた!人生の折々に再会したい作品。

flushingmainst