「子供と大人の境目を彷徨うボスニアのアリス」テイク・ミー・サムウェア・ナイス regencyさんの映画レビュー(感想・評価)
子供と大人の境目を彷徨うボスニアのアリス
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オランダ育ちのボスニア人少女アルマが、病に倒れたボスニア在住の父の見舞いに従兄とその友人を交えた3人旅に出るも…
監督自身もボスニア・ヘルツェゴビナ出まれオランダ育ちの女性で、ジム・ジャームッシュの『ストレンジャー・ザン・パラダイス』の影響を受けているとか。ただ、中盤以降の展開はスティーヴン・キングの『スタンド・バイ・ミー』を思わせる。
本作を国内配給するクレプスキュールフィルムは、これまでに『WANDA/ワンダ』や『システム・クラッシャー』など、奔放かつ掴みどころのない女性が主人公の作品を扱っているが、本作もご多分に漏れず。大人未満のアルマが醸し出すアンニュイな雰囲気に惹きつけられる。監督曰く「カフカ的な旅に出る現代の『不思議の国のアリス』」とキャラ付けしているのも納得。だからというわけではないが『鏡の国のアリス』ばりに鏡に写るアルマのショットが多いのは、彼女の「子供と大人」という二面性を表しているのだろう。同じヨーロッパに括られるも、東のボスニアと西のオランダでは経済格差が激しい。そんな背景を3人の若者を通じて描いているのも興味深い。
「生きる」と「血(=死)」をこれ以上ないほど体現したラストは、女性監督らしい生々しさを感じた。
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