BAD GENIUS バッド・ジーニアスのレビュー・感想・評価
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米社会状況を巧みに盛り込んだ趣向が興味深い
タイ映画の米リメイク作。良質な原石に米映画界が飛びついたという見方もできる一方、出来上がった作品が娯楽作でありながら、現代アメリカの社会状況を映し出す鏡としても機能していることに驚かされる。脚本にはジュリアス・オナーが参加。となるとつい監督作『キャプテン・アメリカ』(25)を引き合いに出したくなるが、比べるべきはむしろその前の『ルース・エドガー』だ。現代アメリカの形を若者目線で見つめるかのようなその構造は『バッド・ジーニアス』でも踏襲されている。その上、本作ではアジア系ヒロインの移民としての立場があり、彼女をとことん利用しようと群がる吸血鬼のごとき特権階級の同級生たちの存在がある。また、誰かが決めた物差しやルールを破壊しようとする若者世代の渇望も見え隠れする。いずれにしても製作時の2024年よりも、トランプ政権下にある今の方が見応えは増す。重すぎず、軽すぎず。96分の気軽さで楽しめる一作。
舞台を米国に変えたがゆえの長所と短所
本作については当サイトの新作評論枠に寄稿したので、ここでは補足的な事柄をいくつか書いてみたい。
「ルース・エドガー」でコンビを組んだ脚本家と監督が、役割を交換して「BAD GENIUS バッド・ジーニアス」を作ったことは評で紹介した。同作は白人の養父母に育てられたアフリカ出身の優秀な男子高校生が、やはりアフリカ系の女性教師と対立する話。多民族国家であるがゆえの根深くて複雑さを増す人種の問題に以前から意識的だったコンビゆえ、2017年製作のタイ映画を脚色する際に天才の苦学生2人を有色人種に設定した改変は、アメリカで切実な状況をリメイク版に反映させたいとの狙いがあったろう。経済格差の問題について考えることを促す、啓発的なメッセージは元のタイ映画にも当然あったが、そこに貧しい有色人種の家庭と裕福な白人の家庭の対照性を加えることで、問題の深刻さを一層感じさせる効果があるように思う。
ただ一方で、原作ではタイに暮らす苦学生たちが共通試験を受けるためにオーストラリアのシドニーを訪れ、さらに米国の大学に進学することを目指すという、現実から夢への振り幅の大きさもまた冒険感やドラマチックさに貢献していた。しかしリメイク版では、西海岸で暮らす2人が、タイムゾーンが違う東海岸側の会場に飛んで受験するというだけの話にスケールダウンしてしまった。初めての異国でカンニングのミッションを遂行する心細さも、海を越えた先の超大国で大学に通う憧れもなくなっている。ジュリアード音楽院に進学したいというリンの夢も、彼女の音楽の才能や献身的な努力についての描写が伴わないので、とってつけた設定のように感じられた。
つまるところ、舞台を米国に移したリメイク版で、多人種の要素を加えて問題の複雑さを加えることができた反面、アジアの途上国からシドニー経由で夢のアメリカを目指すというダイナミックさが損なわれた点が惜しい。
面白かったですよ…
オリジナル版>リメイク版
天才高校生のカンニング計画を描いたバッドジーニアスのハリウッドリメイク版。オリジナルのタイ版も鑑賞しましたがスリリングな展開が多く非常に見応えがあった。今回のハリウッド版も楽しみに鑑賞したが、やはりリメイクということで新鮮味がなく、オリジナル版をほどの面白みはなかった。
2025-126
虐げられる者
前半がもっとコメディっぽかったら、もうちょい楽しめたかも。同級生がナイスなキャスティングすぎて、社会的な事まで投影してしまう。
主人公達に感情移入しにくいのだ。
ヒロインは学費免除とかの待遇を受けてるのにカンニングの片棒を担ぐ。友達の為ではあって、まぁ可愛い部類のカンニングだ。それが組織的になって金銭が絡んでくると笑ってられなくもなる。
元々あるテストの意義が蔑ろにもされ、つまりは、学力に特化してた自分の価値さえも貶めていくように思う。
頭悪いなぁと思う。
またこの同級生達が権力者の子供とかで…金さえ積めばなんとかなる主義で向っ腹がたつ。
主人公サイドに何一つ大義名分がないと来てる。
そこそこシリアスな話しにもなってくから、余計にテンションも下がる。
自業自得の一部始終を見せられてる感じなのだ。
時差を使ったカンニングとか、お♪とも思うのだけど、コメディでもなければクライムでもないし、この頃はだいぶシリアスになって、大人の事情も介入しまくってるから、溜息しか出ない。応援出来ないのだよ。
つまりは、権力のある者達にいいように使われた能力ある者って構図になって、それが落とし所にもなってるから爽快感すらもない。
劇中で、「winwinの関係なんてあるわけない。誰かが犠牲になってるんだから」なんて台詞がある。
当事者達は損をしなくても、どこかで損害を被る人間が出てくるって話だ。
フェラデルフィアのテストは、彼女達のせいで無効になった。人生を狂わされた人もいるだろうって話だ。
後日、彼女が提唱する救済案も、ドヤ顔で話されりゃイラっともする。
…とは言え、表面化しないだけで誰かの幸せは誰かの不幸せの上に成り立っているのが世の常なのだろう。
それが真理だとするなら、中途半端な懺悔とかよりも振り切った方が良かったなとも思う。
タイの作品のリメイクらしいのだけれど、改悪とは言わないまでも、お国柄故にズレてもしまったんだろうなぁと思う。
主役のキャスティングがさぁ…悪いというか合致しすぎてるというか、頭いいだけじゃなくて、腹黒くも見えるからこんな感想にもなったんだろうなと思う。
本家タイとの比較
タイ版とはラストが違うくらい…?
ハラハラどきどき
【”米国格差社会の壁を、人並み外れた頭脳でぶち破り、自らの新しき人生の道を切り開け!”今作は人種問題、格差を絡めつつ原作のラストを大きく改編したラストが爽快な作品である。】
■中国系移民の女子高生リン(カリーナ・リャン)は、全科目学年トップの頭脳を誇り、且つ陸上、ピアノも得意で夢はジュリアード音楽院でピアノを学ぶのが夢の女の子。だが、母は亡くなり、父はコインランドリー経営で、家計は厳しい。
そんなリンが名門校に特待生として迎えられる。
直ぐに友達になった白人、金髪グレース(テイラー・ヒックソン)とその恋人でパパが高名で、富豪弁護士の白人のパット(サミュエル・ブラウン)は、彼女に報酬を払い、試験でカンニングさせてくれと頼むのである。Win Win の関係になった彼ら。リンは見事に二人に好成績を取らせる。
更に、”鉄壁”と言われる全国共通試験でも依頼され、黒人秀才のパンク(ジャバリ・バンクス)も”何故か”仲間になり、時差を利用し、”鉄壁”を打ち破ろうとする・・が。
◆感想<Caution!内容にチョイ、触れていますので、未観賞の方はここまでにしてね!>
・この映画の構想は、製作した「コーダ あいのうた」の制作陣の意図的なモノであったのではないかな。クスクス。
だって、主人公が社会的弱者の中国系移民の女子高生リンでしょ。
そして、おバカな白人カップルが仲間でしょ。
更におバカなパットの父親は高名で富豪弁護士でしょ。
・けれども、今作はそれを途中まで気取られずに(というか、リンは真面目にカンニングを頑張っている。)映す所が面白いんだよねえ。
黒人秀才のパンクが、リンの仲間になった理由とかさ。不法移民だったのね・・。
・それを会場で受験したリンとパンクの答えを、携帯のメールでグレースとパットが待つ場所に送り、鉛筆のバーコードにするシーンなどは、オリジナルのマンマなんだけど、その後の展開が、予想のやや左斜め上に行く展開で、良かったなあ。
<でもって、リンはパンクの行った事を、パットの高名で、富豪弁護士のパパに告げて、見事にパンクの永住権の確保と、多額の真面目に勉強していた生徒達への賠償金と、自らのジュリアード音楽院で勉強をするための、環境代金請求シーンは、ナカナカでありました。>
■私は、年に1-2回、良い年をしたオジサンなのに悪夢を見る。
ショートスリーパーなので、普段は夢なんか一切見ないのに。(あ、昔のガールフレンドは時々出るよ!テヘ。)
どのような夢かというと、イキナリ試験会場に座っていて、目の前の答案用紙は真っ白で、試験官の”残り10分です!”という声が会場内に響き渡り、”ウワワわー!”と叫ぶ夢である。こんな夢で起きた一日は、私は睡眠不足でもあり(普段は3時間睡眠だがイキナリ、ノンレム睡眠に入り、最後30分程度レム睡眠になるようである。)超不機嫌なのである。
受験勉強は好きだったが、本試験は嫌だったもんなあ。
もはやスパイ映画!
カンニング手法が秀逸。
ここまでやる?
勉強したほうがよくない?
そのレベルの苦労。このカンニング。
そして、
苦労するのは勉強ができる学生。
できない奴は金と親の権威で擦り寄る。人を利用する。
サイテーやな。と思う。
何ならできる子の弱みにつけ込むところも嫌い。
まあ映画だし面白くするためにはしょうがないけど、
ことごとく人間のイヤな部分を見せられた。
できる学生を移民との設定により、国際社会の問題も浮き彫りに。
あぁだからこのキャストなのかと思った。
アメリカ映画なのに主人公をアジア系の俳優でキャストしていたで
何でだろうと思っていたから。
(そう疑問に思った背景は、もともと本作がアジア映画のリメイクだから)
集団的なカンニング作戦がもはやスパイ映画といっても過言ではないレベル。
そのスリリングさは非常に面白かった。
でも、ここまでやる?は本当に疑問。勉強しよう。まじで。
リンのお父さん役 ベネディクト・ウォンがいい味出していた。
グレース役のテイラー・ヒックソンも表面だけの友情演技が素晴らしかった。
不条理の可視化と真実の行方
本作は、少々退屈な時間も在りましたが面白い作品でした。
宣伝広告を見た印象の先入観としては、どのようにカンニングを繰り広げ、大舞台の見せ場や完結はどうなるのだろう、との心持ちで鑑賞しました。
私は鑑賞前にあまり下調べをせずに観るタイプで、本作がリメイクであり実話を基にしている事は知らないまま鑑賞いたしましたが、カンニングの緊張感や技術の開発、そして実行中や実行後の緊張感が十分に体感でき、また登場人物それぞれの個性もしっかり表現されていて感情移入もしやすく全体的に面白い映画でした。
ただ、見せ場のSAT会場の山場が、ちょっと間延びしたシーンが多い印象があり、眠くなりました。
作品中の貧困の差においては、過度な差別やいじめが描かれていなかったことは良かったのですが、裕福ではないために危険な考えに意識が向いてしまう非凡な才能を培った人。
逆に、裕福であるがゆえに全てが簡単に「どうにでもなる」と身勝手な意識に自然となってしまった人。
それぞれの人物が社会とうまく絡み合う事を阻害する原因が、作中に描かれている「貧富の差」が、究極悪と最終的にも表現していた作品と思えました。
それは、選択が違っていたとしても、結果的な不条理は解消されないように思えたからです。
以下、その理由場面
①主人公がお金がないために身を引こうとするシーンと、父親が何とかキャリアを築いてほしいと必死にお金の心配をするなと説くシーン。その後の金銭状況。
主人公が身を引いて三流で頑張っていったとしても、貧困の中で不条理に恨みを抱き、間違った道に進んでしまう可能性も高いと思える。
父親や周りの人との確執や衝突は自然と発生してしまう環境だし、そして名門に進学したとして父親が必死に働いたとしても、長い就学期間の学費(形式の学費は無料で有ったとしても、校長が寄付まがいな購入の斡旋を、対象者の経済を顧みず購入するしかない場を設けるなど、ある意味での別の形の学費が掛かる)や生活費は、絶対に賄えそうに思えなかった。
一時は「無理」できても、リアルな食費・物品費・消耗品・交際費・インフラが必ず家計を圧迫し、非情な現実を味わってしまうそうな圧倒的貧富差がある。
父親も人間、体を壊す可能性も高い。
②グレースの存在。
冒頭で言ったように、裕福なために、自然と悪意がなく簡単に「不正」と「利用」ができる事の恐ろしさを、どうしようもなく痛感した。
はじめは普通に接してくれる「いい人」で安心したが、ところがどっこい、リンがちょっと助けてやったが最後、利用し続ける。平然と不正への罪の意識がまるで無く。金で。
しかも、学生。
もし、リンが再度の不正を完全に遮断したとしても、何とか利用するためにあらゆる手を使って引きずり込んでしまうか、逆切れの復讐をするかのどっちかしか想像できない。
そうなる傾向は、バンクを貶めた卑劣な行為に準じている。※グレースは、多少抵抗するかもしれないが利益のため結局パットに委ねるハズ。
③リンも、頭が良すぎるがゆえに、結局我慢する不条理を受け入れられない。
どう「正しい」選択をしても、報われることがない「可能性が圧倒的に高い」のが、貧富の差。
数パーセントの成功を得る陰には、身内や自分自身の犠牲が必ず起きてしまう。
それほど、貧困の差を克服するのが困難なのが現実であると感じます。
バンクもしかり。バンクの意志とは関係なく、どんなに努力しても、背負った罪が消えない。
そういう意味で、あのラストは誰の不幸も描かれてないし、リンのあの「選択」も良かったと思う。
受験生たち。バンク。リン。みんな、新しい人生を歩めるから。
そしてグレースやパットを始めとする、どこまでも身勝手な富裕者達は、必ず報いを受けると思う。
不正ゆえに、正当な環境の人たちだったら、本性をあっさり見抜くでしょうから。
犯罪は正当化できないかもしれないが、逆に新しい人生を手に入れたリンやバンクは、素晴らしい人物に成る事によってその罪を償う事とし、新しい人生を正しく生きてほしいなと思いました。
最後に、ベネディクト・ウォンさん演じる父親像。最高に感動しました。
なんてすばらしい親なんでしょう。子供に寄り添い最後まで、手を上げない。
大事なことです。「信頼」しているという事が伝わりました。
あの父親との最後のシーンが、すべてを明るく捉えて鑑賞を終えることができ、個人的には秀逸と感じるラストシーンと父親像でした。
天才的な頭脳の使い方がバカすぎて終始モヤモヤしたわ
早くに母を亡くして、クリーニング店を営む父とふたりきりで暮らすアジアン少女・リン。貧しい生活ながら彼女にはずば抜けた才能があり、授業料無償の特待生として進学校に編入できた。
編入後、人種的にも裕福度的にもスクールカーストの最下層に位置付けられるリンだが、アッパークラスの少女のカンニングを手伝ってあげたことで1軍に爆上げ。事情を知った1軍の他の学生からもカンニングを依頼され、金銭と引き換えに率先して携わっていく。やがてカンニングは、大学進学の共通テストにまで及び……。
という流れなのだが、そもそもカンニングの仕掛けが大掛かりすぎて、これを実践するぐらいなら、ちゃんと勉強した方が早くね? とツッコミどころも少々。
しかし、それよりもヒロインへの感情移入がまったくできず、終始、憮然とした心持ちで鑑賞していました。金を稼ぐためとはいえ、特待生の待遇が不意になるリスクを考えたらお粗末な選択。さらに後半、カンニングを行うことに対して、彼女が放つ「過ちを犯す権利がある」というセリフは理解ができずお手上げ。
金持ちはカンニングをしてでも優秀校卒業の肩書があれば問題ない社会制度。その社会制度の一端を担っている試験制度。それを出し抜く「貧しい私」は正義なのだ、的な思想が根底にあるのかしら。
とにかくカンニングする方も手伝う方も、価値観がずれまくっていて終始モヤモヤ。巷で賑わした極小イヤホンのカンニング事件や外免切替問題が頭を過ぎったわ。もう性悪説で制度を構築するべきなんでしょうね。
本作唯一の救いは、リンの父ちゃんが
「てめえの馬鹿さ加減にはなあ、父ちゃん情けなくて涙が出てくらあ」
といった感じだったので、そこは共感できて良かったわ。
父親の髪型が
気になって気になって、、、MCUでは短髪だからかもだけど。っていうか、もしかしてカツラなのかなあ?ちょっと浮いてたよね、あの髪型
オリジナルに忠実なリメイクだけど、キャスティングミスったかもなあ。ベネディクトウォンの父親ってやっぱMCUからだろうけど、後が続かないよね。主要メンバー、もう少し華のあるキャスティングできなかったのかな?完全に「B級」テイストでした。
更に序盤でカンニングがバレたのがよくないよ。あれじゃあ、その後疑われるの確定じゃん。あそこはうまく乗り切らなきゃ。
さらにラスト。もうカンニングの時点で「悪事」なんだから、ラストで涙流して良心の呵責を訴えてもねぇ。ストーリー上、ラストを締めるための展開としかいえないんじゃないかな?
昔「ザカンニング」って映画あったの思い出した。
「オーシャンズ11」や「スティング」みたいに犯罪系はどう切り抜けるかの種明かしが大事なわけで。ストーリーの各分岐点で「悪い方」に曲がっていってたら「最後どうなるの?」ってワクワクより「それラスト大丈夫?」って不安の方が膨らむよ。
オリジナルの企画の良さだけに支えられた感じかな。あ、あと音楽は良かった!シーンに合ってるかは別にして。
2025年度劇場鑑賞34作品目(35回鑑賞)
カンニング・サスペンス
かなりリスキー
BAD GENIUS バッド・ジーニアス
2017年のタイ映画「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」をハリウッドでリメイクとのこと
天才少女リンは特待生として優遇されながら名門高校に入学し、学校の顔として良い成績を収める中、成績の悪い親友グレースにテスト中カンニングさせてしまう
それがきっかけで、グレースの恋人パットから話を持ちかけられ
他の劣等生達にも驚くべき方法でカンニングを成功させる
さらにはSATの試験の大がかりなカンニングまで企て、驚愕の方法で実行する
リンの貧しい家庭環境
バンクの違法移民問題
それぞれ問題を抱えていて、それを解消するにはお金がいるにしても
リンやバンクのようなジーニアスは時としてとんでもないことに頭を使ってしまうものだ
何度もバレそうになり
ヒヤヒヤして手に汗を握るが
SATの試験での計画は心臓に悪かった
いやしかし、それだけ頭良かったら
そんなリスクあること選ぶかなーと
残念な気持ちで鑑賞
いや、頭がいいからそこ
びっくりするような犯罪を思いつくのだろう
中途半端に自首もしなけりゃ逃亡するわけでもないこんな終わり方で良かったのだろうか
それでジュリアードはどうなったのかとっても気になるが
受かれば受かったでそれは実力のような言い回しだったが
今までのカンニングが帳消しになるわけではない
冒頭のトマス・モアの言葉が誰の心情を表しているのかを見ていくと面白みが増すかもしれません
2025.7.23 字幕 T・JOY京都
2024年のアメリカ映画(97分、PG12)
2017年のタイ映画『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』のリメイク映画
中国系移民の高校生が富裕層と結託してSAT(大学進学適性試験)にてカンニングを行う様子を描いたスリラー映画
監督はJ・C・リー
脚本はJ・C・リー&ジュリアス・オナー
物語の舞台は、2016年のアメリカ・シアトル
名門校エクストン校への編入のために校長ウォルシュ(サラ=ジェーン・レイモンド)の元を訪れたメイ・リン・カン(カリーナ・チャン、幼少期:オリヴィア・ナグート)と父メン(ベネディクト・ウォン)は、面接でもその秀才ぶりを発揮し、見事に学費免除を勝ち取った
父はコインランドリー経営をしていたがあまり実入りは良くなく、リンの交通費のためにウーバーを始めなければならないほどだった
その後、リンにウォルシュ先生直々の命令を受けたグレース(テイラー・ヒクソン)が案内役に就くことになり、彼女の彼氏パット(サミュエル・ブラウン)とも交流を深めていく
そして、定期試験に臨むことになった彼らだったが、劣等生のグレースは全く問題を解くことができず、リンは彼女に救いの手を差し伸べてしまう
それを知ったパットは、期末試験に向けてのカンニングプロジェクトが立ち上げ、リンは試験の答えを音楽のコードに準えることで他の生徒たちに伝達する方法を編み出す
それに乗った生徒たちがたくさん集まり、1教科200ドルが展開する
だが、クラスの異変を感じていたバンク(ジャバリ・バンクス)は、ウォルシュ校長に不正が行われているのではないかと告発するのである
映画は、タイ映画のリメイクで、内容はほぼ同じとなっていた
グレースへの初動、ピアノを弾くふりをするカンニング、そして最終試験にて「トイレにスマホを隠す」というところもほぼ同じだったと思う
この映画の予告編を観て、既視感あるなあと思っていて、その決定機だったのがバンクがトイレシンクのフタを落としてしまうシーンで、「あ、これ観たことあるやつや」と思い出していた
それでも、かなり記憶が薄れていたのと、予習をしなかったおかげで、スリル満点の映画を堪能することができた
映画では、冒頭にトマス・モアの言葉「If honor were profitable, everybody would honorable.」という結構有名な言葉が引用されていた
本作では「高潔で利を得るなら、皆高潔になるだろう」という翻訳だったが、一般的には「名誉」というニュアンスの方が有名かもしれない
この言葉は、リンの父の言葉「正しいと思うことをしなさい」が源泉となっていて、不正のせいで巻き込まれた受験生たちにどう報いるかという命題の中で生まれている
リンはパットの父テッド(デヴィッド・ジェームズ・ルイス)に直談判し、自首をしない代わりの条件を提示する
それらは再試験の生徒たちへの支援と、巻き込んでしまったクラスメイト・バンク(ジャバリ・バンクス)への償いだったが、彼女は何も望まなかった
このシーンはいわゆる「取引」というもので、テッドに対してそこまで無茶なものではなかった
元々ニューヨークに買う予定だったタワマンよりも安く、救済の基金を設置するのだがら総額をテッドが負担することもない
そうして出来上がる真のWin-Winがあり、これがテッドの心を動かしていた
映画では、SATと呼ばれるアメリカの大学進学適性試験が描かれていて、そこで不正を行う様子が描かれていく(リメイク元はタイのSTIC試験という架空の試験になっている)
別の試験会場で受験し、その時差を利用して、フィラデルフィアからシアトルに解答を送るというもので、そのために150近くの設問を解きながら覚えなくてはいけない
そこでバンクを巻き込むことになるのだが、そこにはリンも知らないパットたちの思惑というものが隠されていた
裏切られ、奨学金もフイにしてしまったバンクだったが、乗りかけた船から降りることはできず、その作戦に加担することとなったのである
リメイク元にも格差社会が根底にあって、単に見せかけの学歴が欲しい富裕層と実利が欲しい貧乏な天才が手を組むのだが、強欲さに関しては富裕層が一枚も二枚も上のように思える
グレースは大学を1年間遅らせて旅に出ると言い出すものの、一刻も早くジュリアードに行きたいリンはその余裕がない
彼らには無尽蔵に使える金と時間があるものの、リンはそれに染まっている時間はなかった
富裕層は目的のために人を道具のように使うのだが、パットたちは自分で金を稼いだことがないので、その感覚がさらに歪んでいる
そのために「話ができるテッド」を相手にすることになるのだが、この選択をすることがリンが唯一無二の天才である所以であろう
起こっている物事の根幹を理解し、その構図を壊さないまま最大の利益を得るにはどうするのか
これが「現代のアメリカにおける正しさ」であると考えるものの、彼女自身はそこに身を委ねない潔さがある
これが冒頭のトマス・モアの言葉に繋がっていると言えるのだろう
いずれにせよ、犯罪映画なので真似をしてはいけないのだが、できる人間もほぼいないと思う
だが、リメイク元の原作は「実際の事件に基づいている」ので、この内容を実行した人がどこかにはいたことになる
方法は違えども、組織的なカンニング計画を立てて実行したというものがあるので、頭の使い所を間違える人はどこにでもいると言えるのだろう
それでも、マークカード方式の試験だからできた作戦で、記述式に変わればやりようがない
なので、暗記型や選択型の「採点の簡易さ」から脱却したときに始めて、このような試験において真の実力が測られるのかな、と感じた
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