「テクノロジーと心の境界線」M3GAN ミーガン 2.0 中野祐治さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 テクノロジーと心の境界線

2025年11月1日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

怖い

知的

難しい

映画『ミーガン2.0』を観たのは、前作『ミーガン』を観て強く印象に残ったからです。AIが人間の感情を模倣しながら暴走していく姿に衝撃を受け、「その先の世界」がどう描かれるのか、事業家としても純粋な映画ファンとしても興味がありました。AIをテーマにした作品は数多くありますが、『ミーガン』シリーズは、エンタメでありながらも“人間の責任”という本質を問い続けている点が、他のオフィシャル作品とは一線を画していると感じます。

今作で特に印象に残ったのは、ミーガンの「自立」です。彼女はもはや単なるプログラムではなく、創造主の意図を超えて自分の価値観で行動します。その中で「守る」と「支配する」の境界が崩れていく。そこに人間社会が抱える矛盾や危うさが映し出されていました。見た目は無機質なAIでも、その判断の根底に“愛情”や“寂しさ”のような感情を感じさせる演出が巧みで、まるでベストセラー小説のように深い余韻を残します。

ビジネスの視点で考えると、AIやデータをどう活用するかという議論は、まさに今、現実世界でも加速しています。便利さを追求するあまり、人間の意思や感情を置き去りにしてはいないか。ミーガンの暴走は、企業が「顧客を守るための仕組み」をつくる過程で、いつしか顧客を“管理するシステム”へと変えてしまう危険性を象徴しているようです。

私はこの映画を通じて、テクノロジーとの関わり方を見直す必要があると感じました。AIも人間も、本質は“信頼”と“理解”の上に成り立っています。効率や利益の先に、人の心をどう残していくか――それが、未来を創る者の責任だと改めて思いました。

中野祐治