劇場公開日 2025年11月7日

「悪くはないが、トリツカレなかった」トリツカレ男 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 悪くはないが、トリツカレなかった

2025年11月9日
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鑑賞方法:映画館

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幸せ

■ 作品情報
いしいしんじの同名小説を原作としたアニメーション映画。監督は髙橋渉。脚本は三浦直之。主要キャストは、ジュゼッペ:佐野晶哉、ペチカ:上白石萌歌、シエロ:柿澤勇人、ツイスト親分:山本高広、サルサ親分:川田紳司、ペチカの母:水樹奈々、タタン:森川智之。

■ ストーリー
一度何かに夢中になると周りのことが一切見えなくなるため、街の人々からは「トリツカレ男」と呼ばれている青年・ジュゼッペが、公園で風船を売る少女ペチカに一目惚れし、彼女に夢中になる。しかし、ペチカが心に深い悲しみを抱えていることに気づいたジュゼッペは、彼がネズミ語を習得するきっかけとなった相棒のハツカネズミ、シエロと共に、これまで「とりつかれて」身につけてきたユニークな能力を駆使し、ペチカの抱える心配事を彼女に知られぬよう解決しようと奔走する。彼の純粋な情熱と行動が、ペチカの運命に奇跡をもたらす展開が描かれる。

■ 感想
大枠は、好きな人を陰ながら支え続ける主人公が最後に報われるという、既視感のあるオーソドックスなラブストーリーです。登場するキャラクターたちが悪役も含めて基本的に良い人ばかりなので、全体的に心温まる物語となっています。

とにかく、何かにハマると一流レベルまで極めてしまう、主人公のトリツカレ男・ジュゼッペのポテンシャルの高さがハンパないです。彼の人柄と、これまで習得してきたさまざまな特技が人々を助けていく構成は、なかなか魅力的です。何かにハマる様子をあえて「トリツカレ」と表現し、後半の展開への伏線としている点も巧みで、物語の深みを増していると感じます。

主要人物にあえて声優を起用しないキャスティングは、没入感の妨げになるので、個人的には好きではないです。でも、本作においては、佐野晶哉さん、上白石萌歌さん等、みなさんよく頑張っていて、気になることはなかったです。

ただ、一方で、独特なミュージカル仕立ての演出により、鑑賞中に気持ちが途切れてしまい、感情移入しづらかったのが少し残念です。また、キャラクターデザインも最初は新鮮ですが、物語が後半に向けてやや深刻な展開になると、セリフ劇のような雰囲気とのミスマッチを感じてしまいました。

とはいえ、そうした点があったとしても、ジュゼッペにもついに待望の「春」が訪れ、彼が報われる結末を迎えたことには、心から喜びを感じます。全体を通して、前向きな気持ちになれる素敵な作品です。

おじゃる
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