ティエンポス 私たちの時空
配信開始日:2025年6月11日

解説・あらすじ
Netflixで2025年6月11日から配信。
2025年製作/90分/メキシコ
原題または英題:Nuestros tiempos
配信:Netflix
配信開始日:2025年6月11日
配信開始日:2025年6月11日
Netflixで2025年6月11日から配信。
2025年製作/90分/メキシコ
原題または英題:Nuestros tiempos
配信:Netflix
配信開始日:2025年6月11日
「メキシコ」映画の「タイムスリップもの」であることから、興味を持って観ました。
「タイムスリップもの」であることについては、タイムマシンの見かけがちゃちで、またその原理の説明や、タイムパラドックスの解消法などの説明が説明になっていなくて、ちょっと興ざめでした。同時代に公開された『タイムトンネル』はもっとそれらしかったですけど、この映画の主眼はそこにないので、しかたないです。プラグが1966年のソ連製から2025年には中国製になったのは、笑えました。
「メキシコ」映画は初めて見ましたが、メキシコ社会を垣間見られてとても興味深かったです。気に入らない上司は出てきますが、悪い人は出てこないし、特に主人公のノラを演じるルセロはとてもチャーミングで魅力的です。また、人々の温かさが伝わってくる映画になっています。
恐らくテーマが、1960年代と2025年における、社会での男女の地位や役割の違いにあるかと思いますが、それはよく伝わってきました。
ラストは、素晴らしいラブストーリーに仕上がっています。
物語はゆったりとしたテンポで進行する。
カット割りも編集も静かで、決して派手な演出はない。
しかし、その緩やかな流れの中にこそ、
この作品の真価がある。
登場人物ひとりひとりの繊細な感情を丁寧にすくい上げ、
積み重ねていく演出、観る者の心に静かに染み入ってくる。
物語が進むごとに、感情のつながりが自然に浮かび上がっていく。
本作がユニークなのは、
「感情の物理」と「宇宙の物理」を並列に描き出す構成にある。
科学と人間の営み、一見相反するようでいて、
実は地続きなのだという視点が、語り口として巧みに織り込まれている。
この構造が、物語に哲学的な深みと静かな熱をもたらしている。
そして「タキオン」
思わず反応してしまうこのキーワード。
ジョン・カーペンター作品や『スタートレック』などでお馴染みの、
実体を持たない仮想粒子(詳しくは知らない)が、
ここでは時間移動の重要アイテムとして登場する。
言葉や概念としての“時間を越える手段”が、
想像力を刺激する。
さりげなく配置された「コンビニ前のデロリアン」、
粋なアクセントとして効いている。
オマージュに走りすぎず、
世界観の中に自然と溶け込んでいるのが好印象だ。
物語の中心にいるノラとエクトルのすれ違いが、
女と男の関係の普遍的な問題にまで広がるかと思いきや、
そこからさらに個人の夢や過去と未来の選択へと展開していく。
単なるラブストーリーでも、哲学的SFでもなく、
「ロケットマン」と「ラブ」に集約させる、
バランス感覚に優れた秀作となっている。
派手さはない。
だが、脚本・演出・演技・テーマの一貫性、
そしてSF的ギミックまでが見事に調和し、
「時間」と〈女と男〉いう普遍的なテーマを、
静かに力強く描ききった作品である。