「前半の展開が面白かっただけに、後半の失速が惜しまれる」ミーツ・ザ・ワールド tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
前半の展開が面白かっただけに、後半の失速が惜しまれる
腐女子の主人公が、路上で知り合ったキャバ嬢の部屋に転がり込む序盤から、キャバ嬢の「死にたい」という気持ちを改めさせようと、彼女の元カレに会いに行こうとする中盤までは、どこに向かって行くのかが分からないような展開に引き込まれる。
妻に愛人として稼がせた金で店のNo.1になっているホストや、幸せを幸せと感じることができない女流作家、客に寄り添うオカマのバーのマスターなど、主人公が歌舞伎町で出会う面々も、皆、キャラが立っていて面白い。
役者達も好演していて、特に、杉咲花の板に付いたヲタクっぷりは見応えがあるし、凛とした美しさと、どこかに消えて無くなりそうな儚さを併せ持った南琴奈の存在感も印象に残る。
ところが、キャバ嬢が300万円を残して姿を消した中盤以降は、ホストが妻の愛人に刺されて入院したり、主人公が一時帰宅して母親と口論したり、主人公のところにキャバ嬢の元カレから電話がかかってきて、キャバ嬢は自分の存在価値を試す「実験」をしていたのだと告げたりと、一体何の話なのかが分からなくなってくる。
キャバ嬢と元彼は、どうして別れてしまったのかとか、その元彼は、どうして精神を病んでいるのかとか、主人公と母親(毒親には見えない)は、どうして折り合いが悪いのかとか、キャバ嬢は、どうして居なくなってしまったのかといったことも、最後まで分からずじまいで釈然としないものが残った。
結局、堅物の銀行員で、ヲタクの自分に引け目を感じていた主人公が、歌舞伎町で暮らす個性豊かな人々との触れ合いを通じて、ありのままの自分を受け入れ、自分らしく生きて行こうとする物語なのだろうが、特に、後半は、余計なエピソードが多い上に、テンポも悪く、冗長に感じてしまった。
それから、ラストは、主人公と同じ趣味を持っているらしい銀行の同僚(主人公は、彼女のために自宅からグッズを持ち帰ったはず)との、ヲタク同士の交流も描いてもらいたかったと思えてならない。
そうですね。
もっと、母が娘に「普通」の生活を押し付けたみたいな描写があれば分かりやすかったと思うのですが、むしろ、娘の幸せを願う良いお母さんに見えてしまいました。
「私とあなたは…違うじゃない?」という台詞から、由嘉里と母は血が繋がってないのかも。
他にも「違う」に当てはまる理由はありそうですが、勝手に想像するしかないですね。

