「オタク道とは絶望しないことと見つけたり」ミーツ・ザ・ワールド おかずはるさめさんの映画レビュー(感想・評価)
オタク道とは絶望しないことと見つけたり
実家暮らしで金融機関での安定した職もある主人公の由嘉里。
時間と金をつぎこめる作品がある恵まれたオタクだが、それでも相次ぐ周囲の「卒業」を目の当たりにして気が気でないというのもわかる。
そんな付け焼き刃で始めた婚活が上手くいかず、痛い酒席での失敗に陥るのもよくわかる。
オタクが一度は感じるリアルでまともな(と世間で評価されやすい)大人になることへの強い希求。
学生生活においてこなれた人付き合いをしてこなかった人間が、思い立っただけで変われるはずがないのだが、そういう光が差す(あるいは魔が差す)瞬間は確かにある。
由嘉里はわたしだ。
人生に絶望したライが由嘉里を拾った理由は明確に説明されない。
現時点では、お節介でよくわからないことを早口でまくし立てる由嘉里の存在に関心が生じて、暫時死への暗い希求を忘れさせたからと考えている。その生活が続き、いずれは希死念慮を失うことを恐れて家を出たというようにつながる。
ユキが言うようにだれもが世間一般の幸せをそのまま受け止めて人生を送れるわけではない。人とはかけ離れた個性は、常にその人に苦しみをもたらす。
といって不幸とは限らない。
他人が容易に面白がれないものを興味が湧き、他にはない豊かな人生の可能性が広がっているからだ。
ユキが言うように、絶望ー死に至る病ーに罹らないよう、関心を持てる何かを探してすがり続ける外に、人生という厄介な敵に立ち向かう方法はない。
若さを失ったころに観ると、平静に観られていいんじゃない。
蛇足だけど、由嘉里の同僚の眼鏡女子。
木南晴夏に似た女優だったので、「トクサツガガガ」の別の世界線のように感じられて、少し愉快だった。
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