「演技と真実と」生きがい IKIGAI 豆之介さんの映画レビュー(感想・評価)
演技と真実と
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演技と書いたが映画を撮り始めたのは被災してそう経っていないことが『能登の声』で分かる。ロケに使われた家屋がすぐなくなってしまう。
『生きがい』。鹿賀丈史が演じた黒鬼。あだ名の由来は御陣乗太鼓を叩く姿だと思うが最初の殺気みなぎる瞳とラストでボランティアの青年に向ける眼差しの暖かさ。その差に茫然としてしまう。出番は限られるが黒鬼の幻で現れる妻が実にいい。妻への黒鬼の口調。現実ではないと分かっているかは不明だが妻のやわらかな雰囲気と合わさってかつての幸せがある。ただ黒鬼はそれが幸せというものと分かっていたかどうか、これも不明だ。青年への一言は黒鬼が踏み出す第一歩。それが『能登の声』に繋がる。
『能登の声』。ここで映される人達は生きがいを見つけた人達だ。働きながら折れそうになっている心を隠している人もいるかもしれない。でも画面では傷だらけになった能登で生きていきたいという姿勢が見える。映らない場所で心折れてしまった人達もいるだろう。そう思うとつらい。この映画のタイトルは『生きがい』だが、やはり演技は真実に敵わない。観ている最中にメインは『能登の声』だと感じていた。
上映館が少ないのが残念だ。多くの人に観てもらいたい。
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