「笑っていいのか戸惑う映画、というジャンル」新解釈・幕末伝 こひくきさんの映画レビュー(感想・評価)
笑っていいのか戸惑う映画、というジャンル
本作を観て、まず最初に浮かんだ感想は「これはどう受け取るのが正解なんだろう」という戸惑いだった。笑っていいのか、苦笑いでやり過ごすべきなのか、あるいは真顔で眺めるのが礼儀なのか。観客にその判断を委ねる作品は多いが、本作はその委ね方がかなり強引である。
豪華俳優陣が勢ぞろいし、全員が全力で“学芸会的な何か”をやっている。おそらくこれは狙いだ。重厚な幕末を軽く扱い、歴史の権威性を解体する。名優に大声で叫ばせ、長い間を使ってボケ倒す。その姿自体を笑う。理屈としては分かる。ただ、その「あえて」の先に、もう一段の視点や裏切りが用意されているかというと、正直よく分からない。
笑いはほぼ内輪で完結している。役者のキャリアや過去作を知っている人ほど「いつものやつだな」と理解できる一方で、そうでない観客は笑うタイミングを見失う。結果として、劇場には「今、笑うところだった?」という沈黙が断続的に流れる。多くの人は、笑えないというより、笑いに参加できない。
「福田監督らしい」と言えばそれまでだが、その言葉が免罪符になってしまっている印象も強い。新解釈とは何だったのか。歴史の見方が変わったわけでも、人物像が更新されたわけでもない。残るのは、豪華な内輪ウケと、予定調和の騒がしさだけだ。
決して失敗作と断じる気はない。ただ、観終わったあとに何も更新されない。視点も感情も、少しも前に進まない。その意味で本作は、「笑っていいのか戸惑う映画」という、なかなか珍しいジャンルに分類されるのかもしれない。
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