劇場公開日 2025年11月14日

「体が入れ替わって15年」君の顔では泣けない 紅の猫さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 体が入れ替わって15年

2025年11月22日
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鑑賞方法:映画館

毎年、7月の第3土曜日に会っている人がいる。体が入れ替わって15年。今年はいつもと違う日に会った。なぜなら元に戻れる方法があるかもしれないから。

体が入れ替わってしまった2人の15年間を辿りながら、本当に元に戻ることが良いのかどうかを考えていく。
坂平陸(芳根京子)はなかなか水村まなみ(高橋海人)として生きていくことに馴染めなかった。坂平は本当の家族とも水村の家族とも上手く関係が築けない。対する水村は本当の家族とも坂平の家族とも上手く関係を築き、恋人も次から次へと変えていく。
坂平が感じる孤独が痛い。
なんで水村はそんな風なんだ。自分は元に戻った後のことも考えて行動しているのに。
しかし、恋愛、本当の父との別れ、結婚、妊娠、出産と経験し坂平は水村まなみとしての人生に馴染んでゆく。
芳根京子も高橋海人も性別が変わってしまったという難役を繊細に演じた。特に高橋海人の時折見せる女性的な柔らかさは素晴らしい。

映画を観ていて疑問だったのがどうして水村まなみは恋人を次から次へと変えたのかだった。
コミュニケーション能力が高く関係性を築くのが上手いのはわかる。だから坂平の気難しそうな母親とも関係性を築けた。でも、恋人を頻繁に変える男は女にとって嫌な奴じゃないんだろうか。本来は女である水村はどうして恋人を固定せずにいるのか。

それは元に戻ったときに坂平に責任を負わせた状態にしたくなかったからではないか。結婚して家庭を持ってしまったら、その責任を自ら選択していない坂平に負わせてしまう。
坂平が自身に起きたことを水村に話したとき、水村はどこか恨めしそうに見えた。本来自分が体験する筈の女としての人生を坂平が体験している。自分は男としての人生を全うしていないのに。
どうして?水村が感じる孤独もまた痛い。
それならそれで水村は彼女をそんなに作らなくてもいいと思うが、どこかで自分と同じ女の肉体を求め触れていたかったのかもしれない。

本当の自分というものがあるとして、それは一体なにが定義してくれるんだろうか。
顔、体、生き方。
いろいろあるけど、人生とはあるかわからない自分ににじり寄っていくもの。
そんなことを考えた。

紅の猫
トミーさんのコメント
2025年11月23日

女(外見男)が元に戻る事に拘っていたのも、そう考えると肯けますね。ジェンダー抜きで、男(外見女)の方が腰が重く一旦落ち着くと安定に走るのかもしれません。

トミー
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