「「お互いの顔では泣かないように」」君の顔では泣けない かなさんの映画レビュー(感想・評価)
「お互いの顔では泣かないように」
男女が入れ替わる映画と言えば、大林宣彦監督の「転校生」新海誠監督の「君の名は」を思い出しますが、男女が入れ替わった時間の経過が長い映画は初めて見ました。男女が入れ替わるのはコミカルではありません。入れ替わったのは二人の秘密です。親に言っても信じてもらえないので、二人の胸にしまっておくしか手立てはないのです。
15歳で今までの家族と離れる、そして今までの自分と離別する、まったくの他人になるという人生がひっくり返るような体験でしょう。他人として生きていく、肉体と相違して男と女が生きることは残酷な仕打ちではありませんか。
15歳のとき入れ替わって30歳になるまでの15年間。入れ替わっている時間においてそれぞれの生活が変化する。ただ男女が入れ替わるのは肉体のみです。男性と女性がそれぞれの肉体になったとき、心と本能も男性・女性になるのかというのが最大のポイントではないでしょうか。しかし30歳になったとき男性が入れ替わった水村まなみには、大きな変化がおきていて、「自分の人生が」が確立しています。
15年後、30歳の時に元に戻るか、二人は話し合います。二人のやり取りをとおして二人の葛藤が胸をうちます。それは仮に元に戻ってしまったら、入れ替わった男女のそれまでの記憶、人生はどうなってしまうかと考えてしまうからでしょう。
入れ替わった男性を芳根京子と女性を高橋海人の演技が絶妙です。入れ替わった時の経過を着る服やヘアスタイルの変化で描写し、お互いの近況報告ではシリアスかつコミカルに演じていました。突然肉体が入れ替わった高校生時代を演じる西川愛莉と武市尚士もとまどいの演技がよかったです。
2時間の上映時間のなかで揺れ動く入れ替わった男女の心持を丁寧に描写し、期待を上回り複雑な感情の機微が素直に伝わってきた映画でした。
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