「ファンタジーを人生を省みる映画に昇華させた傑作」君の顔では泣けない ryosukeさんの映画レビュー(感想・評価)
ファンタジーを人生を省みる映画に昇華させた傑作
中身が入れ替わるという、もう何度も擦り倒されたベタな設定。
ただそれが単に元に戻るファンタジードラマではなく、もしもそのままで人生が進んで行くとしたら。この発想がすでに勝負ありかもしれない。
中身が入れ替わったまま続く人生は孤独だ。
お互い以外に理解者は皆無で、親兄弟にも友達にも理解されない。
入れ替わっている事自体が秘密だから、家族に会うこともままならない。
そして一度も意思疎通をすることなく迎える死別。
進学、就職、恋愛、結婚、、。
ありがちな展開だとお互い結婚して一緒にいるという選択も考えられるが、
本作ではお互いに別の道を進んでいくから、人に理解されないという孤独が更に続く。
直面する性自認の問題、変わっていく自分の体、自分とは何かといったアイデンティティーの問題と、それを手にしているかつての自分自身の姿。
抱えている問題は果てしなく多く、重く、よく30歳まで生きてきたねと称賛したくなるほど。
ラストは自分ならここで切るなと思った所で物語は終わる。
素晴らしいラストだったが、あえて言うなら、もしその後元に戻ったのだとしたら、その後の物語も見たいと思った。
それは、その後2人がどうなったかという物語的興味というよりは、
15年入れ替わったまま生きてきた2人にとって元に戻ることは、
それはそれで他の人には分からない苦しみがあるはずで、
そこに僕らが人生において大切なものを考える一助になると思うからだ。
「アバウト・タイム」を見た後のような、自分の人生を省みて、誰かに話したくなる様な傑作だと思う。
ストーリーを語りたくなり末筆になってしまったが、芳根京子さん、髙橋海人さん、2人とも素晴らしかったと思う。
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