「新しい視点」君の顔では泣けない ゆちさんの映画レビュー(感想・評価)
新しい視点
恥ずかしながら原作を知らなかった私は、初めてKing & Princeの髙橋海人さんがこの映画に出ると聞いて、「入れ替わりモノ」と知った時に、もしかしてコメディ系?ちょっと心配…と思ってしまいました。
でもその後、ストーリーの詳細を知った時に、リアルさを追求するような内容だったので、今までにない新しい視点だなぁと、これはかなり重たい話になりそうだと感じました。
以下、印象に残ったところ
●喫茶店異邦人の店主 ふせえりさん
陸とまなみの2人が、はたから見たら意味不明な話をしているのですが、聞こえていても聞いていないような空気のような存在感でいてくれるのが、とても安心できていい味を出していたなぁと思った。
●とにかく陸とまなみを演じている4人とも、違和感なく本当に入れ替わっているのではないかと思わせてくれる演技力だった。(若い時のまなみ役の男の子は色白なのに、髙橋海人くんは色黒なのでそこだけちょっと違和感だったけどw大学生になって急に日サロ行った?って感じwでもそこを凌駕するくらいに演技力が素晴らしかった)
●まなみの実家に行って家族と食事をするシーン
もし中身が入れ替わってたら?と言われた両親が、ちょっと気持ち悪いかも?というニュアンスのことを言っていて、本当のことは言えないって思っただろうなぁ、2人ともショックだよなぁと思った。
もし自分の子供が同じようになったら、自分はなんて言ってあげられるだろう?と考えてしまった。
どうにもできないけど、何かあった時には素直に伝えてくれるような関係性を築いていたいなと思った。
●若い時の陸が自分の実家に行った時に、母親から冷たくされて、父親からもあまり来ないほうがいいと言われ、ショックを受けて帰る時に、外に出た途端に鍵をガチャっと閉められて、その時の何とも言えない表情がめちゃくちゃ悲しかった。父親が亡くなった後にもう一度まなみと実家に行き(ここでタイトルの台詞が放たれる)、口論になってしまい喧嘩別れした時も、同じように鍵をガチャっと閉められ、あの時と同じだ…とまた陸の表情を見て悲しくなった。
父親が亡くなっても自分は堂々と泣くこともできなくて、自分の居場所がどこにもないような感覚になっているのに、気持ちを理解してくれるはずのまなみとも喧嘩をしてしまい、すごく孤独を感じたと思う。
●まなみが元に戻る方法がわかったかもしれないと陸に伝えて、戻りたいか戻りたくないか気持ちを伝え合うシーン
絶対に元に戻りたいまなみと、今が幸せだから戻りたくない陸。まなみはそれまで陸としていろんなことをそつなくこなして来たように思えるが、心の中ではたくさんの葛藤があり、やはり本来の自分に戻りたい気持ちが強かったんだろうなぁ。素直に泣きながら感情をさらけ出すシーンが印象的だった。
●まなみが同僚(セフレ?)に過去の自分の話をするシーン
そんなことまで言っちゃって大丈夫なの?って心配したけど、隣見たら同僚寝てたε-(´∀`;)ホッ
でも、いつもお互いの家族ともうまくやっていて、明るく振舞ってたまなみだけど、やっぱり不安や悩みや葛藤がたくさんあったんだろうなぁと思わせるシーンだった。
●入院中の陸からの電話で久しぶりに話すシーン
妊娠中に切迫早産で入院し、経過が良くなく生死を意識するうちに、死ぬのが怖いという感情だけでなく、まなみの体を自分が殺してしまうことになるという申し訳なさを感じて、この気持ちを唯一理解してくれるであろうまなみに素直な気持ちを吐露する。(ここで今度は逆に陸からまなみへタイトルの台詞を放つ)
また話せる関係に戻ってよかった(涙
●とにかく陸の旦那さんはめちゃくちゃいい人
ずっといい人だった旦那さん。それまで何もうまくいかなかった陸にとって、ほんとに安心できる居場所になってくれてたと思う。本当のことは言えないけど、何かを悟ってくれているような旦那さん。
元に戻るかどうかの選択を迫られている陸にかけた言葉。あれがすごく心強かっただろうなぁ。それで何かが吹っ切れて、運を天に任せようと思えたのかな。
●ラストシーン
私的には異邦人で(体が)陸がいつも通り右側に座っているのを見て、戻らなかったんだろうなぁと思いました。でも、その後の2人の仕草で、わからなくなりました笑
恐らく、敢えてどちらとも取れるようにしたのではないかなぁと思います。
その後の2人の人生を、観た人それぞれが想像できるように。
とにかく、俳優陣の演技が素晴らしく、ずっと惹き込まれる映画だったなぁと思います。
推しが出ているとか関係なく、近年で一番素敵な映画でした。
原作を読み終わったらまた違う感情が出てくるような気がするので、読了してからまた観に行きたいと思います。
舞台挨拶中継を見て、坂下監督が芳根京子さんと髙橋海人さんのことをキャスティングした理由に、それぞれ好きな作品があると仰っていて、過去の作品が未来に繋がっているのをとても嬉しく思いました。
坂下監督が原作の君嶋彼方さんの伝えたいことをかなり汲み取って再現されていたそうなので、原作者も納得の出来に仕上がったようです。
たくさんの方に観てほしい作品です!
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