「静かな絶望と、小さな祈り」アフター・ザ・クエイク ころさんの映画レビュー(感想・評価)
静かな絶望と、小さな祈り
クリックして本文を読む
村上春樹の小説からイメージした通りの映像だった。
独特の間と、深く沈み込むような音と映像。
テーマは、大きな悪、災難、不運。
そういうに個人では手に負えない悪と出会ってしまった人間の話。
そして、どこかで一見無関係な人がその悪と戦い、この世の平穏を実現させてしまう話。
震災直後の1話目は特に象徴的だと思う。
中身をどこかに持っていかれてしまった男の話。
かえるくんの夢、中身のわからない箱、どこかでつながっているんだよ、という言葉がほかのエピソードとゆるやかにつながっていく。
かえるくんがミミズと戦うという設定は一見すると寓話のようだが、実は非常に現実的だ。
「悪や怨嗟をため込んだ存在が、災害を起こさないように戦う」という構図は、人間の無意識や社会の記憶と重なる。
戦う、戦う存在を応援する、という行為は自分では意識して何かをすることではなく、心の痛みに耐えながら日常を営むことなのかもしれない。
妻を失った喪失感に耐えること、焚火をすること、踊ること、ごみ拾い、それ自体が祈りで戦いなのかもしれない。
暗い映画館を去る時には、もしかしたら、かえるくんを置いてきてしまったのかも、と思ってしまった。
深く深く、自分を沈めて、そこから帰ってくることを約束してくれるような映画。
コメントする
